ギャンブル分析の中心概念2-効率的市場仮説

全体の賭け金が戻る比率と個人の期待値は異なる

競馬にはいろいろな馬券が存在しますが,一番,単純なのは勝馬を一頭当てる「単勝」です.日本の中央競馬においては,この単勝では賭金の総額から約20%が控除され,残りの約80%が勝者に配分されます(馬連など単勝・複勝以外の控除率は約25%).すなわち,賭金の80%が返ってきます.それでは,誰でも回数を多く競馬をすれば,賭金の20%が失われて,80%が戻ってくる,という値に近づくのでしょうか.

「大数の法則から答えはYESだ」と答える人がいます.しかし大数の法則の主張は「もし競馬の配当金の期待値が80%であったならば,賭けの回数を増やせばその配当の平均値は80%に近づく」と言うことです.

しかしながら「配当金の期待値が80%である」という保証はどこにもありません.「賭けたお金が参加者全員に戻される比率」と「個人の賭けの期待値」は異なるというところが重要です.「賭けたお金が参加者全員に戻される比率」は賭けたお金に対して戻ってくる平均であって,個人では,高く戻ってくる人もいれば,低く戻ってくる人もいるはずです.

この点をはっきりさせるために,競馬予想の専門家と競馬を全く知らない人が「勝馬」を予想したという状況を考えましょう.「どの馬が勝つか」ということだけで勝負をすれば,専門家が勝馬を当てる可能性は,確実に高くなるはずです.

もっと極端な話を考えれば,馬の番号を1頭だけランダムに選ぶ機械と予想の専門家を比べれば,勝馬を当てる確率は専門家の方が高くなります.競馬の玄人と素人では玄人が,ランダムに番号を選ぶ機械と専門家では専門家の方が,勝馬を当てる確率は高いはずです.

このように「勝ち馬を当てる確率」は人によって明らかに異なります.当てることが上手な人もいれば,下手な人もいるはずです.ここから「勝馬を当てることが上手な人が配当金の期待値は高くなり,そうでない人の配当金の期待値は低くなる」と考えたくなります.したがって,配当金の期待値も人によって異なり,単純に全員にとって80%になることはない,と考えたくなります(100%を超えれば儲けることも可能!).

しかし「勝馬を当てる確率が人によって異なる」ことと「配当金の期待値が人によって異なる」ことは,さらに別のことなのです.次にそれを考えてみましょう.

再び,予想の専門家と競馬を全く知らない人を想定し,この2人が予想した馬の単勝を100円買った時の配当金の期待値を考えてみましょう.専門家は確かに勝馬を当てる確率は高いですが,勝つ確率の高い馬を指名した(本命馬)とすれば,当たった時の配当金(オッズ)は低くなっているはずです.これに対し競馬を全く知らない人の配当金は高く(穴馬)なるはずです.これを考えると,当たる確率が高い専門家が配当金の期待値も高くなるとは,必ずしも言えないはずです.

競馬では必ずしも勝つ確率の高い馬の馬券を購入するわけではありません.自分が予想する馬の勝つ確率とオッズ(倍率)を考慮して,馬券を購入することになります.勝つ確率が高い馬(本命)に賭けても配当が低ければ期待値は低くなりますし,勝つ確率が低い馬(穴馬)に賭けても配当が高ければ期待値は高くなるでしょう.

効率的市場仮説とは,私であっても,専門家であっても,素人でも,はたまた馬の番号をデタラメに1頭選ぶ機械であっても,配当金の期待値は同じで80%になるという仮説です.

「そんな馬鹿な!?」と思われる方も多いでしょう.これはあくまでも仮説であって,正しいとされたものではありません.では,なぜそんな仮説が成り立つと言えるのでしょうか?