夏頃、新潮社文庫に翻訳が出ているのを見ました。訳された 題名は、確か「判決の時」だったと思います。でも原書で読ん だ方が面白いと思います... 実は、これは「 The Firm 」で有名になった筆者のデビュー 作です。The Firm がルーキーの苛酷な長時間労働を一部に描い ていて、The Pelican Brief が環境問題に題材を得ているのに 対して、今回のは何と、人種問題です。レイプで検挙された白 人二人を銃で撃ち殺した黒人が被告となり、その裁判の物語で すが、結果は「 not guilty 」で釈放される、というのが筋で す。そこに至るまでの裁判の経過の物語と言えます。舞台が南 部である事からも、人種の問題が深刻に語られています。話で しか知らないKKK( Ku Klux Klan )が出てきますし、何よ りも私達にとって興味深いのは、陪審員制度の運用です。一般 の市民が、裁判の種類によっては、判決を下すという、日本と は全く異なるシステムを知る良い例題になると思いましたし、 こういう制度の下での民主主義と、そうではない日本の様な所 での民主主義とでは、全く同一に語れないということも実感し ました。そうして、何が正義なのかという事も、考えさせられ た問題の一つです。人2人も射殺した人間が陪審員に認められ て(一般の市民です)無罪になるのですから...また弁護士 の果たす役割も重要で、日本の様に法律のスペシャリストとい うだけではなく、一般市民の陪審員や判事、検察側の弁護士を も相手にする、とっても人間的な力量の必要な職業なのだ(少 なくとも合衆国では)と思いました。 S.Sheldon の様な華やかなスペクタクルがあるわけでもない し、デビュー作ということで筋の運びや記述に時々退屈してし まうことはあっても(さすがに3部目の The Firm に至っては 読者を引き付けるコツを体得しているようですが...)、絶 対に原書で読むことを勧めます。扱っている問題の深刻さもさ ることながら、考えさせられることの多さでは、3冊の中でも 1番です(ちなみに本の厚さも、最も厚い様です)。 |