(94-6-1)
title: The Client
author: John Grisham
from: Island 約 1300 円
reviewer: K.Kaki(kkaki@sci.shizuoka.ac.jp)

J.Grisham の最新作で、つい最近翻訳が出ました。今度は、 11才の少年が弁護士の Client になる話です。少年に雇われ る弁護士は50才代の女性で、彼女が弁護士の資格を取ったの は、離婚した後。career は5年程という、普通でない(?) 弁護士です。

日本においては、わずか11才の少年が弁護士を雇うなどと 言うことも考えられませんが、何よりも、11才の少年を Client として尊重する弁護士が存在することも考えられません。もち ろんアメリカにおいてもとっぴな事なのでしょうけれども、で も、あのアメリカならあっても不思議はないと思わせる書きぶ りです。

11才の少年でも一人の人間として尊重するという態度に、 まず感動しました。もちろん、少年のほうにも一人の人間とし ての自覚がはっきりある反面、子供としての感性で行動したり もします。大人でもあり子供でもある、けれどもそれが決して 不自然には感じられない人間として、少年が描かれています。 こんな子、本当にいそうです。アメリカにならば...(私の 偏見かな...)

事の起こりは、弟(9才)と隠れてタバコを吸っていた少年 が、ある殺人事件の犯人の弁護士が自殺をする所に遭遇してし まうということです。ただ単に目撃したのではないところが、 問題の始まりでした。人が自殺してしまったのを警察に通報し なければなりませんが、何せ、彼らはタバコを隠れて吸ってい たのですから、自分の立場も問題になる訳です。更に、彼らの 家庭は母子家庭で、父親が暴力を働くために母親が離婚したと いう、複雑な家庭です。それで不良行為(11才で隠れてタバ コを吸っていた。しかも9才の弟も一緒に。ただし弟はこの時 がタバコの初めての体験。)を働いていた不良少年(Juvenile deliquent)だとなったら、日本においてだったら、何を言って も取り合ってもらえないでしょう。けれども、この話の中では 少々違いました。行いを憎んでも人は憎まず、とでもいうので しょうか?

J.Grisham はいつも社会の問題をテーマに、弁護士を介在さ せて話を書いています。今回は、子供の権利の問題とでも言え そうです。現実の社会では、親の感情のはけ口として暴力をふ るわれる子供とか、あるいは養育を放棄された子供等が、多々 存在しているのでしょう。そうした子供の権利の侵害に対して、 問題を投げかけている内容だと思いました。並の detective story などよりもずっとスリルに富んだ、それでいて考えさせ られる内容の話です。読むならば、絶対に原書を勧めます。