この本をよんでちょっと驚いた。自分がやってることとあま りにも近かったからだ(ちなみに私は物理学科に属しているが、 著者達は計算機科学者だ。)この本で扱われていることは稀に しか起きないことをいかに応用するかと言う工学の話しだ。例 えば、100枚のコインを投げて、1枚が裏で残りが全部表と いうことはほとんど起きない。この、殆ど起きない、というこ とを利用して、いかに「他人に情報を盗まれずに伝えたい人に だけ伝えるか?」を追求する話しである。 一方、僕がやっている統計力学は「滅多に起きないことは無 視する」ということで成立する学問だ。例えば、コップの中の 水が自然に熱湯と氷に別れるということは滅多に起きないので 無視する(エネルギー保存則からすればあってもいいのだが)。 だから、統計力学とこの本で扱われていることは表裏一体とい うわけだ。 著者の一人の渡辺さんとは僕はちょっと親しいけれど(親し いも何も、彼はこの欄の編集者だ)、科学に対する見方が、全 然逆なのでいつも激論になる。これは、やっていることが表裏 一体ということと関係しているかもしれないと、今気付いた。 あとがきで著者達は彼らの研究分野を「数学」と位置付けて いるが、これはちがう。むしろ、数理物理だろう。(あるいは、 僕のやっている分野が物理ではないのか?)また、情報科学科 に属する彼らが計算機を使わずに紙と鉛筆で研究をし、理論物 理学者(のつもり)の僕が、計算機ばかりを使っているという のもアイロニカルかも知れない。もはや、物理、数学、情報科 学という切りわけには意味がないのだろうか。情報理工学専攻 へ行ってこういう研究をするのも悪くないかもしれませんよ、 学部生のみなさん。
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