ナウシカとは、宮崎駿の代表作であるマンガ「風の谷のナウシカ 」(以下「ナウシカ」)の主人公の女の子である。およそ10年 前に、この作品は劇場用として映画化され、空前の大ヒットとな ったので、ご存知の方も多いと思う。映画は今でも時折テレビ放 映され、「ナウシカ」は今やほとんど国民的作品となった。経済 学部の先生によって書かれた本書は、この「ナウシカ」を1つの ユートピア文学として分析していく、異色の文芸評論である。 マンガの評論といっても、本書の扱うテーマは深くて重い。ユ ートピアが喪失し、共通の目標が見えなくなった現代の状況の中 で我々はいったい何の行動が出来るのか、いったいどこへ行けば よいのか。この渇いた問題に対して、思想の分野から果敢に挑も うとしているのである。 ソ連の目指したユートピアも解体した。戦争も各地で勃発し、 「永久平和」のユートピアもますます崩れている。しかし、その 一方で、オウムなどが示唆するように、ユートピアを目指す熱情 は全く消え去っていない。 しかしオウムの目指すユートピアは、他者をポアすることで、 その実現を目指した。逆に言えば、1つのユートピアを実現する には、どうしても他のユートピア(意見の違う他者)を否定した い誘惑に駆られる。これをオウムはストレートに実行していた。 オウムを認められないとすれば、他にもっと我々も納得するユ ートピアがあるのか? それとも、1つのユートピアを目指すの ではなく、複数のユートピアが共存する寛容な状況が「ユートピ ア」か? もしかして、ユートピアは存在せず、戦闘が自然状態 なのか? 社会の状況が、「多様化」「価値観の相違」という言葉などで 納得させようとしているが、どこかバラバラでしっくりきていな いように見える現在、本書の意義は非常に大きいと思う。
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