田河水泡という漫画家と彼の有名な作品「のらくろ」について はずっとずっと昔(私にとっては第二次世界大戦以前の日本と いうものは歴史的な存在です)日本の漫画の草分けとしてそう いう人がいてそういう漫画があったという位にしか認識してい ませんでした。「のらくろ」の画はいろいろな所で見たことが あり、それが軍隊を舞台にした作品であること位は知っていま したが、作品そのものを読んだことはありませんでした。こう した古臭い(ゴメンナサイ!)漫画を後に大先生といわれる十 分年を取った人が書いていたという勝手な思い込みが打ち砕か れる本でした(無知に基づく思い込みにおいては、時間的な順 序すら無視されるみたいです)。 著者は田河氏の妻で、そのエッセイということなのですが、 どういう風にして田河氏に会ったかとか、田河氏がどんなこと をしていたかというところがとっても意外で面白いんです。こ れは読んでのお楽しみということにしておきます。 「のらくろ」は1931年から少年倶楽部という雑誌に連載され1 941年執筆禁止になるまで、約11年間続いていた漫画です。当 初は、兵役が2年ということもあって、2年の連載のつもりで いたのが(このあたりも何だか時代を反映していて面白いと思 うのですが)、人気が出て、もう1年、もう1年と続けている いるうちに11年が経ってしまったと書かれています。この本を 読むと、何故「のらくろ」がこれだけ人気の出る作品であった のかが理解できますし、田河氏がこうした作品を産み出せた理 由も、氏の生き方とのかかわりで理解することが出来ました。 偶然に生まれたような作品でも、そうなる必然があるというこ とを分からせてくれた本でした。 「のらくろ」という作品に話を絞ってしまいましたが、この 本が教えてくれた事はそれだけではありませんでした。大正デ モクラシーという言葉だけは日本史の時間に習って知っていま すが、それに続く昭和初期までを含めて、第二次世界大戦以前 の日本はさながら中世の暗黒時代(これだとて偏見)のごとく 十把一絡げにして考えてしまいがちな、戦後の経済的に豊かに なった日本しか知らない私にとって、壁の様に立ちはだかる世 界大戦の向こうの時間と現在に文化的なはっきりとしたつなが りがあることを分からせてくれた本でした。 沢山掲載されている昔懐かしい(?)写真や田河氏のイラス ト等も、頭にばかりではなく(?)目にも楽しい一冊です。
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