高齢化社会の問題が盛んに論じられる中で、何が問題でどう しなければならないかということをこれほどはっきり述べてい る本はそうないのではないかと思います。 「昔は日本では家族がお年寄りを手厚く世話をしたものだ」 から現在でも出来るはずだとか、介護は家族(女性)の仕事だ などの誤った認識で、「親孝行、したいときには親は無し」が 一般的だった短命な社会での現象からは量的にも質的にも異な る規模になっている、現在の社会における高齢者介護の問題を 論じる誤りをはっきり指摘している。高齢者介護の問題はもは や個人や家族単位で処理できる状態ではなく、社会的に支えな ければならない状態になっているということが明確に述べられ ている。また介護には医療と同様に専門的なトレーニングを受 けたスタッフの技術や知識が必要になってる一方で、現在の医 療行為とは異なる対処が必要になっているということも指摘し ている(現在の医療行為で無理に対処した結果、多量の寝たき り老人を産み出してしまったという)。 従って、高齢者介護の問題を社会福祉として対処しようとす ると社会福祉先進国の北欧に学ぼうということになり、本書で も著者自身が視察に訪れた経験を交えて、先進の北欧の社会福 祉の様子が高齢者介護の観点から記述されている。著者も述べ ている様に、「高齢者福祉施設の水準の高さは、日本人からみ れば現在のところ、目の眩むような素晴らしさといって過言で ない」のであるが、だからと言って、日本の福祉施設も先進の 素晴らしいモデルのようにするのが良いとは言っていない。著 者はそこまでは言っていないが、第一次、二次世界大戦の直接 の戦場にはならなかった北欧と、日本との社会資本の蓄積の違 い理解した上で、先進のモデルに(モデルの一つに)学ぶ必要 があるのだと評者は常々思っています。 日本の福祉はなぜよくならないかという問題に対しても、明 快な答えが述べられています。「英国病」という形で指摘され る「福祉やりすぎ」論への反論や、日本独自の「国民負担率」 を盾にした福祉は負担であるという考え方が誤っているという 指摘を読むと、日本では福祉と経済の問題はまじめに考えられ てこなかったという著者の指摘が良く理解できます。 先進国共通の大問題である高齢者介護の問題は、新たな社会 システムをつくることでしか解決の方法がないということ、福 祉の充実と経済成長は両立すること、そうしてそのような社会 こぞが本当に豊かな社会であることを教えてくれる本でありま した。
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