(96-10-4)
title: 結婚の社会学
author: 山田昌弘
from: 丸善ライブラリー 1996.8.20 \720
reviewer: 嘉規香織

副題には「未婚化・晩婚化はつづくのか?」とあります。そ うして著者は、現代日本の結婚状況についてよく言われている 様な

  • a. 結婚に関する意識や志向が大きく変ったわけでもないのに、 結婚しない人が増え続ける。
  • b. 男女交際が盛んになっているのに、結婚しない人が増え続け る。
ということに対して、社会学的には
  • (1) 結婚に関する意識や志向が変らないゆえに、結婚しない人が 増え続ける。
  • (2) 男女交際が盛んになっているからこそ、結婚しない人が増え 続ける。
なのだと指摘し、これらの事態が生じる原意を、戦後日本社会 50年の歩みの中に見つけだそうとするのが本書の目的だと言っ ています。

「社会学」と言っているように、まず現状を述べ、それの従 来よくなされて来た解釈に対して、統計数値に基づいて反論し ます。例えば、男余り説のウソ、「結婚したくない人が増えた」 説のウソ、男女交際が下手になったのウソ、わがままな若者 が増えた説のウソ、時代に遅れた男性説のウソ等々。そこから 更に、結婚意識の男女差(イベントvs.生まれ変わり:どちら がどちらのものか分かりますよね!ところで、改姓などによっ て、生まれ変わることを強いられてるという様なこともあると 思うのですが、ここではそのことに関しての言及がまったく無 いというのは、期待していただけにちょっと残念です。)を明 らかにしたところで、そうした差が形成される社会的な要因( 経済発展・成長の問題)を指摘して、未婚化・晩婚化を説明し ます。その端的な例が、「経済力が高い父親を持つ女性」と 「経済力の低い男性」だそうで、低経済成長社会、ゼロ成長と続 くなかで、これら結婚の難しい2つのグループの割合が増加す るというわけです。その演繹的帰結が国際結婚の増大だと言わ れると、説得力があるだけに、国際的な社会になったから国際 結婚も増えるのだという単純なものではないことが良く分かり ます。

恋愛―男女交際に関しては、社会的経済的な要因によって活 発になった交際によって選択肢が増えた分、結婚と恋愛が分離 しているということと、結婚はしやすいけれども離婚がしにく い日本の制度的な問題もあるということも指摘されています。

最後に著者は、結婚難の本当の原因は「結婚=幸福」という 思い込みにあるのではないかと、実証的根拠のない私見だと断 って述べています。でもそう思い込ませているものがあるはず で、それこそ、本書が明らかにして来たことではないかと思い ます。

評者にとってみれば、未婚化・晩婚化が進もうが、そ れほど神経質になることはないのではと思うのですが、こうし た現象を社会学的に論じるということに非常に興味を覚えまし たし、本書の説明ぶりには感服しました。また法律的な制度の 問題で、そうした現象が緩和されるならば(逆に言えば、法制 度によってそうした現象が助長されているのならば)、制度を 変えてゆく必要はあるのだと思っています。