賭けとギャンブルの定義?
このサブサイトは「賭けの科学」というタイトルです。そこでまず、ここで取り扱う「賭けやギャンブル」の定義について、考えなければなりません。これはなかなか難しい問題です。
一般的にギャンブルとは、「運」や「不確実性」による結果に左右され利益か損失を得る行為と考えられます。この定義では2つの問題点が生じます。1つは「賭け将棋」はギャンブルか?という問題です。昭和の初めなどでは将棋を勝負事として勝ち負けで金銭をやり取りする「賭け将棋」が行われていたと聞きます(参考:小池重明)。将棋は不確実性を持たない完全情報ゲームなので、賭け将棋まで含めると上記の定義は矛盾します。
もう1つは「投資はギャンブルか」という問題です。株式や不動産などへの投資、もっと広げて考えると会社の事業投資、研究開発投資という行為も運や不確実性を伴います。では、これはギャンブルなのかという問題です。これに対しての典型的な答は、賭けた者の期待利益が正ならば投資であり、負ならばギャンブルだ、だから株や事業への投資はギャンブルではないとするものです。一方で、個人や企業の投資も十分ギャンブルだ、とする答もあり、これは人によって見解が分かれる部分だと思います。株や不動産や事業に対する投資も期待利益が正かどうかは分かりません。私が思うには、リスクを好まず株式や不動産への投資を避けたい人はそれを「ギャンブル」と呼び、投資を好むものは「それは投資であってギャンブルではない」と呼ぶ傾向にあるように思えます。
このサイトでは主に不確実性を伴う行為について扱いますが、もう1つ将棋やオセロなどの不確実性を伴わないようなゲームについても、少しだけ考えていきたいと思います。そのような考えから、このサイトで扱う対象をうまく定義できないか考えてきました。そこで、その観点からの別の定義を考えたいと思います。それはその行為がゼロサムゲームかどうか、という観点です。一般にギャンブルと呼ばれる行為は、誰かが勝ち、誰かが負けて、そこでやり取りされる金額の合計はゼロです(ここでは参加者だけではなく、主催者・胴元の利益も含めます)。このやり取りされる金額はゼロ(生産を伴わない)という定義だと、賭け将棋は含まれ、株式・不動産などへの投資行為は含まれません。そして、この定義こそが、本サイトで扱う問題を定義することに適しているのでした。そこで、一般的な定義とは異なりますが、
このサイトにおける「賭け」とは、金銭を利得とするゼロサムゲームである
としておきます。