オークションの種類

オークションは様々な形があります.狭義には,売り手が1人で買い手が多数で財を取引するものをオークションと呼びます.絵画のオークション,マグロの競り,中古車のオークションなど1つの財を取引するものを単一財(single-unit)オークションと呼び, 多数の財を取引するものを複数財(multi-unit auction, multi-object auction)オークションと呼びます.複数財のオークションには,多数のワインのロット,国債,木材など同質・同一の財を多数売る場合と,周波数や空港のハブなど異質の財を複数 売る場合とで考え方や分析方法が異なります.後者の方は,財の組合せ効果(シナジー効果などとも呼ばれる)を考えてオークションの方式を設計する必要があり,近年になって大きく研究されているテーマでもあります.

公共事業入札などは,買い手が1人で売り手が複数ですが,オークションの理論の売り手と買い手を逆にすることで同じモデルで解析できるとされています(実際には,入札の参加者が提供する財の品質の違いがあり,同じ問題にはならない).また,証券取引所などで取引される株や債券は売り手と買い手のそれぞれが複数いてダブルオークション(double auction)と呼ばれます.これは需要と供給によって価格が決定される経済学の(通常の)市場に近いものなので,オークションと考えるよりも一般の市場を解明する部分均衡モデルを当てはめて分析されることが多いです.

ギャンブル分析の中心概念2-効率的市場仮説

全体の賭け金が戻る比率と個人の期待値は異なる

競馬にはいろいろな馬券が存在しますが,一番,単純なのは勝馬を一頭当てる「単勝」です.日本の中央競馬においては,この単勝では賭金の総額から約20%が控除され,残りの約80%が勝者に配分されます(馬連など単勝・複勝以外の控除率は約25%).すなわち,賭金の80%が返ってきます.それでは,誰でも回数を多く競馬をすれば,賭金の20%が失われて,80%が戻ってくる,という値に近づくのでしょうか.

「大数の法則から答えはYESだ」と答える人がいます.しかし大数の法則の主張は「もし競馬の配当金の期待値が80%であったならば,賭けの回数を増やせばその配当の平均値は80%に近づく」と言うことです.

しかしながら「配当金の期待値が80%である」という保証はどこにもありません.「賭けたお金が参加者全員に戻される比率」と「個人の賭けの期待値」は異なるというところが重要です.「賭けたお金が参加者全員に戻される比率」は賭けたお金に対して戻ってくる平均であって,個人では,高く戻ってくる人もいれば,低く戻ってくる人もいるはずです.

この点をはっきりさせるために,競馬予想の専門家と競馬を全く知らない人が「勝馬」を予想したという状況を考えましょう.「どの馬が勝つか」ということだけで勝負をすれば,専門家が勝馬を当てる可能性は,確実に高くなるはずです.

もっと極端な話を考えれば,馬の番号を1頭だけランダムに選ぶ機械と予想の専門家を比べれば,勝馬を当てる確率は専門家の方が高くなります.競馬の玄人と素人では玄人が,ランダムに番号を選ぶ機械と専門家では専門家の方が,勝馬を当てる確率は高いはずです.

このように「勝ち馬を当てる確率」は人によって明らかに異なります.当てることが上手な人もいれば,下手な人もいるはずです.ここから「勝馬を当てることが上手な人が配当金の期待値は高くなり,そうでない人の配当金の期待値は低くなる」と考えたくなります.したがって,配当金の期待値も人によって異なり,単純に全員にとって80%になることはない,と考えたくなります(100%を超えれば儲けることも可能!).

しかし「勝馬を当てる確率が人によって異なる」ことと「配当金の期待値が人によって異なる」ことは,さらに別のことなのです.次にそれを考えてみましょう.

再び,予想の専門家と競馬を全く知らない人を想定し,この2人が予想した馬の単勝を100円買った時の配当金の期待値を考えてみましょう.専門家は確かに勝馬を当てる確率は高いですが,勝つ確率の高い馬を指名した(本命馬)とすれば,当たった時の配当金(オッズ)は低くなっているはずです.これに対し競馬を全く知らない人の配当金は高く(穴馬)なるはずです.これを考えると,当たる確率が高い専門家が配当金の期待値も高くなるとは,必ずしも言えないはずです.

競馬では必ずしも勝つ確率の高い馬の馬券を購入するわけではありません.自分が予想する馬の勝つ確率とオッズ(倍率)を考慮して,馬券を購入することになります.勝つ確率が高い馬(本命)に賭けても配当が低ければ期待値は低くなりますし,勝つ確率が低い馬(穴馬)に賭けても配当が高ければ期待値は高くなるでしょう.

効率的市場仮説とは,私であっても,専門家であっても,素人でも,はたまた馬の番号をデタラメに1頭選ぶ機械であっても,配当金の期待値は同じで80%になるという仮説です.

「そんな馬鹿な!?」と思われる方も多いでしょう.これはあくまでも仮説であって,正しいとされたものではありません.では,なぜそんな仮説が成り立つと言えるのでしょうか?

ギャンブル分析の中心概念1-大数の法則

平均値は理論的な期待値に近づく

賭けを分析する上で,まず重要な概念は何と言っても確率論における「大数の法則」でしょう.これは,賭けの回数を多くするに従って,様々な平均値はその理論的期待値に近づいてゆくという定理です.

例えば,ナンバーズの番号を予測する!?でお話したことが,これに相当すると考えられます.再度,この大数の法則と言う文脈で説明してみましょう.ナンバーズ3のストレート(3桁の数字を正確に当てる)くじにおいて,第1回からの当選番号を順番に並べてゆくとしましょう.
191,981,194,105,592,792,708・・・
このとき,すべての数字が出る頻度は回数を重ねるにつれ,10分の1(10%)に近づいてゆく,というのが大数の法則が言っていることです.

実際に,この「回数が多くなる」というのが,どのくらいなのかが問題です.賭けの種類と,問題にしている「期待値」によって,この回数はかなり大きくならなければなりません.改めてナンバーズの番号を予測する!?の内容を復習してみましょう.

ナンバーズ20回目までに出る数字の個数は60個です.この60個の数字の中で,「6」が出ているのはたったの1回!1.7%に過ぎないのです.「60」と言う数字の個数(ナンバーズ20回)は大数の法則が働き,すべての数字の出る頻度が10%に近づくと言うには,不十分な回数であることが分かります.

20回目までは,0から9までの数字の出現頻度が1.7%から18.3%と幅があるのに対し,600回目(数字としては1800個)になると9.1%から 11.4%と,10%の周りにかなり近づいて来ることが分かります.この600回を十分と考えるか,不十分と考えるかは議論の分かれるところです.考えている問題に依存するでしょう.

このように,ギャンブルの回数を多くすれば,様々な値は理論値に近づいてくるでしょう.逆に言うと,回数が少ないうちは,理論値から離れる可能性も高くなります.回数が少ない時は,大負けしている場合もあれば,大勝ちしている場合もあるわけです(標本平均の分散が大きい).

「複雑な法則」ほど大数の法則が効きにくい

大数の法則から,サンプル数が多くなれば10個の数の出現比率は確率上の平均値である10%にに近づいて行きます.しかし,平均値に近づくまでにはかなりのサンプル数が必要となることが分かります.単純な数の出現比率だけでこうですから,「3が出た次の回には6が出やすい」「前々回に3が十の位に出現し,前回に9が出た場合は,今回は1が出る」というように法則を複雑にすればするほど,その偏りが平均に近づくまでの回数はかなりの時間を要する事が分かります.(要するに複雑な予測方法は,誤りである事も簡単には検証できない).言い換えると「法則を複雑にすればするほど,外れていないように見せることができる(=その法則が当たっているかのように騙されやすい)」と言えます.
大数の法則だけではギャンブルは分析できない

このように大数の法則は,ギャンブルを分析する上で重要な概念となります.このような事は,既に確率理論が発展した1960年代辺りには明らかになっていたと言えるでしょう.いわゆるギャンブル分析の「古典」とも言えるお話です.しかし,このような確率理論だけでは,十分に賭けを分析できないのは,既に7.賭けやギャンブルを分析する学問分野は?でお話しました.次は,このことについて考えてみましょう.

賭けやギャンブルを分析する学問分野は?

賭けとギャンブルの分析は,確率・統計論だけではできない

賭けやギャンブルを分析する学問分野は何でしょうか?
多くの人は「確率・統計」を思い浮かべることと思います.確率論を専攻する研究者には,それで十分と考える方もいるようです.それ以外にどんな分野が必要なのか,と言う人までいるようです.しかし,多くのギャンブルにおける不確実性は,客観的に与えられる確率で測れるものではありません.

何人かの方は,それに加え心理学を思い浮かべることと思います.賭けで熱くなってしまう人間の心を分析すれば,いろいろなことが分かるのではないか,と.

私は,賭けやギャンブルを研究するために,たぶんもっとも重要なのはファイナンス理論(金融工学)ではないか,と思います.(ちなみに私は専門家ではありません,よく間違えられますが.)

確率論・統計論は賭けを分析するための最も重要なツールであることは間違いないのですが,ギャンブルに必要な確率・統計論は,ファイナンス理論に含まれているので,これで結構足りるのではないかと思います.また心理学にしても,ファイナンス理論が「行動ファイナンス」という心理学や行動科学を取り入れた分野が含まれていることを考慮すれば,かなりのツールがファイナンス理論と呼ばれる分野に揃っているのではないかと思います.

これに加え,ゲーム理論・実験経済学は大きな助力を成すと思います.ファイナンス理論では個人の戦略的行動を,十分に取り入れて理論が構築されているとはまだ言えす,このような行為が賭けやギャンブルの重要な部分を占めていることを考えれば,これらの分野は必要であります.

認知科学,特に認知心理学は,このような賭けに対する人間行動を分析している分野でもあります.多くの研究者がいます.他に,人数が多くなったり,ポーカーやブラックジャックの必勝法を解析したりする場合には,計算機科学の助力が必要となります.

他に,遊戯の歴史と言う点から民俗学や社会学から分析する方,ギャンブルのもたらす財政収入という点から応用ミクロ経済学や財政学の観点から研究する方もいると思います.

ギャンブルを科学することは,上記の分野から力を借りるだけではなく,上記の分野に何らかの含意をもたらすことが可能であると私は考えています.金融市場の分析や人間の不確実性における意思決定の分析では,複雑で多くの要因が絡み合っていることが多いのに対し,ギャンブルという状況は比較的単純な要因に還元することが可能です.また多くのデータが数値化して記録しやすいと言う利点もあります.

このような理由から,ギャンブルを対象とした研究は,学際的でエキサイティングな非常に大きい分野となる可能性があると私は考えています.

賞金額が高いナンバーズの番号

番号は予測できないが,期待値が高くなる番号はある?

ナンバーズの番号を予測する!?では「ナンバーズの当選番号の系列を見ると偏りがあって予測できそうな気になることもあるが,それは乱数や確率に対する錯覚である」という話をしました.ナンバーズは乱数であり,当選番号を予測する方法はないと考えられます.しかしナンバーズでは,その当選番号を選んだ人が少なければ,当選者の賞金は多くなります.これは賭けられた金額を(主催者が控除した後に)当選者で分けるナンバーズの仕組みによるものです.したがってナンバーズでは皆が選ばない「不人気な数」を選ぶことで賞金が高くなると考えられます.これは賭けの分類で,勝つチャンスは「完全に運による」が,利得は「技術により高くなる」という項にナンバーズを分類した理由であります.

ナンバーズ3のストレート(3桁の数字をその順番も含めて当てる)を例にして,人気・不人気な数を考えてみます.表1は,第41回から第 600回までの560回のナンバーズのうち,いくつかの条件に当てはまる当選番号の出現回数と賞金の平均金額を表にしたものです.(最初の40回をはずしたのは,このような「くじ」は開始直後には 傾向が安定しないと考えたからです.)

条件 出現回数 賞金の平均値
A 全体 560 98,926
B 日付に読める数 162 82,190
C 日付に読めない数 398 105,738
D 9のつく数 168 102,496
E 4のつく数 136 103,498
F 4と9の両方がつく数 33 111,664
G 3つとも同じ数 8 70,075
H 2つが同じ数 145 115,210
I 2つが同じ数で日付に読めない 108 122,954
J 2つが同じ数で,日付に読めず
更に4かつ9がつく数
4 155,650
表1 ナンバーズ3ストレートの条件別平均賞金額(第41回から第600回まで)

「4と9の両方がつき,同じ数が2つ並び,日付に読めない」数を狙え

560回すべての平均賞金額は98,747円です.当選確率が1000分の1であることを考えると期待値は約99円です.ナンバーズが200円であることを考えると,主催者の控除率は実に50%であることが分かります.ちなみに,通常の宝くじも控除は約50%で,宝くじはわりに合わないギャンブルであることが分かります.

どんな数が人気・不人気なのか考えてみましょう.まずロトなどでも知られていることですが,人は誕生日や記念日などをラッキーナンバーとして選ぶことが多いようです.したがって,日付に読める数に比べ,日付に読めない数は人気がないと考えられます.例えば,私の誕生日は6月28日ですが,これに相当する628などは日付に読める数です.これに対し,一般的に下二桁が32以上の数は日付に読めません.ここで3月5日などは305と考え,035とは読まないこととしました.表を見ると,日付に読める数は平均を下回り,読めない数は平均を上回ることから,この考え方がある程度正しいことが推測されます.

またホテルの部屋番号などで分かるように,日本人は「死」を意味する4や「苦」を意味する9という数を忌み嫌う傾向にあるため,このような数も不人気と考えられます.確かに4や9がつく数も平均を上回っており,特に4と9の両方がつく数は111,664円と高い平均賞金額となります.
同じ数が3つ並ぶ数字は560回のうち8回出ていますが,いずれも賞金はぐっと低くなります.例えば第309回には777が出ていますが賞金は 57,100円です.第600回までの最低賞金額は第476回の39,800円ですが,この時の当選番号は111です.ナンバーズで3つ同じ数字となる数を選ぶほど馬鹿なことはない.これに対し,同じ数が2つだけある数字の賞金は非常に高くなることが分かります.これらは人気・不人気だけではなく,ボックス・ストレートに対するナンバーズの賞金配分の仕方にも理由があるかもしれませんが,詳細は分かりません.

これらをすべて合わせて「4と9の両方がつき,同じ数が2つ並び,日付に読めない」という条件を満たす数(994,494など)を見てみると,このような数は4回出ており平均賞金額は155,650円と非常に高くなることが分かります.

ちなみに表2は第1回から600回までのナンバーズの高額賞金のベスト10です.この表を見ても「2つ同じ数があり,4か9がつき,日付に読めない」数は賞金が高いことが裏付けられます.ちなみに最高金額は第2回の988で,初期の頃の不安定さも重なって高額の当選金になっています.

順位 当選番号 賞金額 順位 当選番号 賞金額
第1位 2 988 333,500 第11位 45 970 186,600
第2位 21 558 250,100 第12位 252 004 184,900
第3位 115 770 215,000 第13位 138 995 179,800
第4位 469 949 206,500 第14位 102 560 179,300
第5位 96 944 201,900 第15位 202 676 176,900
第6位 149 003 201,000 第16位 146 766 166,900
第7位 44 697 199,500 第17位 563 080 164,200
第8位 94 933 196,400 第18位 409 400 164,000
第9位 113 744 191,100 第19位 342 686 162,600
第10位 26 984 190,100 第20位 82 144 161,600
表2 第1回から第600回までのナンバーズ3ストレート賞金額ベスト20

ナンバーズのちょっと良い数が分かりました.しかし残念ながらこのような不人気番号は,それが知れると皆が選ぶために人気番号となってしまいます.もう,遅いかもしれません.これについては,ギャンブルに必勝法はあるかで考察しました.機会をみて,もう少し深い考察を加えてみたいと思います.

このような傾向は既に知られていることで,賭けの科学に関する本・文献・リンクで紹介したギャンブラーのための数学講座というホームページでも,似たような事が研究されていますし,やはり同じページで紹介した「スポーツくじと宝くじの賭けの市場の効率性」,ファイナンスハンドブック 18章,今野浩・古川浩一監訳,1997,朝倉書店(私が翻訳)でも,同様の傾向が述べられています.

(参考文献)「スポーツくじと宝くじの賭けの市場の効率性」,ファイナンスハンドブック 18章,今野浩・古川浩一監訳,1997,朝倉書店.(原本はJarrow, R. A., Masksimovic, V. and Ziemba W. T. eds.,Handbooks in Operations Ressearch and Mangement Science,vol.9 Finance, Ch18.)

ナンバーズの番号を予測する!?

20回までのナンバーズ3の番号の60個の数字を考察する

ナンバーズは物理的な機械でランダムに数が選ばれるため,競馬やTOTOなどと異なり当選番号を予測することができません.しかし,過去の当選番号の系列を調べてみると,傾向があるように思えて番号が予測できるような気がしてきます.

このような「確率・統計上のゆらぎ」と「人間の幻想」については多くの文献が考察をしていますが,ここではナンバーズの例を取りあげて,このような幻想について考えてみたいと思います.

このような傾向の中で一番単純なものは,頻度の多い数と少ない数を調べるものです.ここでは,ナンバーズ3の20回目までの当選番号において,どの数字が何回出たかを調べながら,このことを考えてみます.皆さんもここで,ナンバーズが始まって,まだ20回の時の気持ちになり,考えてみてください.

ナンバーズ3は1回の抽選で3つの数字が選ばれて,それを当てるくじです.20回までには,合計60個の数字が出現します.以下の表1には20 回までの当選番号,表2には各数字の出現個数をまとめました.

   
 表1:ナンバーズ3 第1回から第20回までの当選番号  表2:ナンバーズ3における数字の出現回数と出現比率

 

ここで20回目までの当選番号を見ると,6が1回しか出ていません.20回までには全部で60個の数字があり,平均で1つの数字は6回も出現するのはずなのに,たったの1回!これは何らかの傾向があると言わざるを得ない!という気になってきます.

まず,これはそんなに起こり得ない現象なのでしょうか?そこで10個の数から, でたらめに1つ数字が60回選ばれる時に「6」が1回以下しか出ない確率を求めてみましょう.まずはじめに「6」が1回も出ない確率を求めてみると,これは6以外の数字が60回すべて選ばれる確率であり, となります.次に「6」が1回だけ出る確率を計算すると です.合計すると「6」が1回以下しか出ない確率は0.014で,1.4%の確率でこのような現象が起こることが分かります. しかし,「6」に限らずに,少なくとも1つ以上の数字が1回以下しか出ない確率と考えると更に高くなるわけで(約14%),このようなことは決して珍しい事ではないことが分かります.

その後は6が出にくいのか?出やすいのか?

ところで,この傾向を見て「6は出にくい」と単純に考える人はあまりいないようです.むしろよく言われることは,「すべての数は万遍なく出るはずなのだから,もし6が多く出なければ,6の出る比率は少なくなり全ての数が1/10(10%)で出ることに反してしまう.だからこの後(第20回以降)は6が多く出るはずだ.」という考え方です.これは一見すると本当のことのように思えますが,正しいのでしょうか?誤っているとすれば,どこがおかしいのでしょうか?

そこで実際に21回目から600回目までの1740個の数の出現回数と出現比率を見てみましょう(表3).「6」の出現回数は162個(平均は174 個),出現比率は9.3%(平均はもちろん10%)であり,「6」の出現比率はむしろ低くなっています.「この後は6が多く出るはずだ.」という考え方は正しくなかったことがわかります.(実際には20回目の後も32回目まで6が1回も出現しない.)また同様に6が出にくいわけでもないことが分かります.(4や7の方が出現回数が低い)
ナンバーズ出現数字

表3:ナンバーズ3における数字の出現回数と出現比率.1-20は1回目から20回目まで,21-700 は21回目から700回目までを表す.
20回目以降に6が出やすいわけでも,出にくいわけでもない

20回目まで,ほとんど6は出ていないし,それ以降も6の出現確率は低い.それではやっぱり6が出にくいのかと言えば,そうではありません.20回目までの6の出現比率が1.7%であったのに対して,600回目までの合計の出現比率は9.1%になり10%にぐっと近づいていることが分かります.数の出現比率が10%に近づくのは,21回目から600回目までの全体の個数が多くなり,20回目までの影響が無視できるほど小さくなったからで,6が多く出たからではないのです.6に限らずすべての数字の出現比率を見てみると,20回目まででは1.7%から18.3%と幅があるのに対し,600回目になると9.1%から11.4%と,10%の周りに近づいていることが分かります.

これがいわゆる「大数の法則」です.試行の回数が多くなればなるほど,それぞれの番号の出る頻度は理論的な平均値に近づいていきます.これについては8.ギャンブル分析の中心概念1-大数の法則で再考します.ここで主張したいのは,「大数の法則によって各番号が出る頻度はすべて平均値に近づくが,それはある時期にあまり出なかった番号が,次の期間に多く出るから近づくわけではない」ということです.

人は「ランダムである」ということと「満遍なく出る」ということを間違って認知しやすいということが知られています.じゃんけんであいこが続くと,それとは違った手を出しやすくなるという必勝法はこれを利用したものと考えることもできるでしょう.

主催者・胴元は賭けをするか?(主催者から見た賭けの分類) 

主催者の収入も運で左右される-カジノ・ブックメーカー

「賭け」にはたいてい主催者がいます.仲間うちで賭け麻雀(法律で禁止されてます)をするときはいませんが.賭けを「博打」と呼ぶときは,主催者を「胴元」などと呼んだりします.カジノの主催者はオーナーで,日本の中央競馬ではJRAです.もっともJRAは執行機関であり,本当の主催者は国であるともいえます.宝くじの場合には,みずほ銀行を主催者と考えるよりは,自治体などを主催者と考えたほうが良いでしょう.多くの場合,法律で公認のギャンブルは公営で,ギャンブルの主催者は公的機関であったりします.

主催者の収入が運に依存するかどうか,言い換えると主催者自身がギャンブルをするかどうかは賭けを分類する重要な要因です.多くのギャンブルの主催者が公的機関であることを考えると,公的な収入が運に左右されるかどうかに対応するので,これは経済学的にも政策的にも重要な問題です.

カジノにおける多くのギャンブルでは,主催者も賭けをします.例としてルーレットを考えてみましょう.アメリカンルーレットの場合,数字の数は 0と00を含めて38個で,1つの数字に賭けて当たった場合の払い戻し倍率は36倍です.仮に全員が(「赤」[黒」とか「奇数」「偶数」のような賭け方ではなく)1つの数字に賭けるような賭け方をすれば,主催者の期待収入は
賭けられた金額×(38分の2)
となります.しかし,これはあくまでも期待値で,確実な収入ではありません.たまたま,参加者がルーレットの数字を次々に当てた場合は,主催者収入はマイナスになります.主催者の収入が,参加者と同様にルーレットの目に左右される点では,主催者も賭けをしていると考えられるでしょう.

主催者の収入が運に依存しない「パリマチュアルシステム」

これに対し宝くじや日本の競馬のような賭けは,パリマチュアル(parimutuel)方式と呼ばれ,賭けられたお金から一定の額を控除した後,勝者にお金を配分するという方法です.このような方式では主催者は賭けはしません.例として,日本の競馬を考えてみましょう.日本の中央競馬では,賭けられたお金の(約)25%を主催者が控除した後,その金額を勝者に配分することになっています.主催者の収入は
賭けられた金額×25%
となります.ルーレットと異なる点は,これは確実な収入であり,本命が来ようが,穴馬が来ようが,どの馬が1着になったかには関係なく,主催者の収入は賭けられたお金にのみ依存します.ルーレットでは,主催者の収入が出た目に依存するのとは対照的に,この場合は主催者は賭けはしていません.

ルーレットの38分の2も,日本の競馬の25%も,主催者の控除率と呼ばれるものですが,その内容は,このように少し異なります.

主催者が賭けをする方式でも,回数が多くなれば確率論の「大数の法則」に従って,収入は期待金額に近づくことが予想されます.したがって,この場合は賭けの回数が多くなることが主催者の収入を安定させるためには大切です.ルーレットにおいて,賭けられるお金の総額が1億円のときに,1億円が1回かけられるのと,100円が1万回賭けられるのでは,後者のほうが主催者には好ましく(リスクが少なく)なります.日本の競馬のようにパリマチュアルシステムでは,この2つに差はありません.

なお,日本の競馬と異なり,イギリスの競馬はブックメーカー方式と呼ばれ,主催者が賭けをする形になっています.

ギャンブルに必勝法はあるか

必勝法とは何だろう

このホームページには必勝法を求めて来る方も多いと思いますが,残念ながら,このような方には,このサイトはあまり役には立たないでしょう.
ここではそもそもギャンブルに必勝法とは何であり,存在するかどうかについて考えてみましょう.これは,このサイトの情報を理解するための多くの概念に触れる良い機会になります.

必勝法が何であるかは,1.賭けの分類や,2.賭けの分類-再考で考えた「運」や「偶然」に対する「技術」の比率によって,考える問題が異なってきます.

まず理論的には完全に「運に左右されないゲーム」である将棋・囲碁・チェス・オセロについて考えてみます.これはギャンブルというよりはむしろ,このような「ゲーム」に必勝法が存在するかどうかの問題と考えられます.このようなゲーム(ゲーム理論の用語で言えば,有限完全情報ゲーム)は,先手が勝つか引き分けるか,または後手が勝つか引き分けるか,という必勝法が理論的には存在します.理論的には存在していても,現実にはすべての場合の数を尽くすことが難しく,現在,それを計算することができません.

これに対し,少しでも「運」に依存するもの-麻雀・パチンコ・競馬・ポーカー・ルーレット-に対しては,当然ながら100パーセント勝つ方法は存在しません.そこで,このようなゲーム・ギャンブルに関する必勝法とは「賭けた金額より獲得できる金額の期待値が大きくなる方法」と考えることができるでしょう.それでは,このような定義におけるギャンブルの必勝法は存在するのでしょうか.

このホームページではこのことを徐々に考えてゆくことになります.多くの議論を必要とするため,すぐにここで答えを与えることはできません.しかし,皆さんに考えていただきたいのは「もし必勝法があるとして,ギャンブルの参加者全員がそれを知って実行したときにどうなるか」ということです.

公表されるような(理論化されるような)必勝法はない

例えば,競馬でほぼ確実に勝ち馬を推測する方法があったとしましょう.もし全員がその方法を知って勝ち馬を予測すれば,オッズ(賭けの倍率)は1倍まで下がってしまいます.もちろん,競馬を当てるという意味ではこうなっても「必勝法」かもしれませんが,儲かると言う意味では,もはや「必勝法」ではありません.麻雀も,もし必勝法があるとしたならば,全員がそれを実行したならば,配牌の違いだけに依存するために,全員の期待値は同じとなるはずで,「必勝法」ではなくなります.

注目したいのは,Edward Thorpと呼ばれる,有名な数学者の例です.彼は数学者であり,現代で言う金融工学の研究者であり,なおかつギャンブルの天才でした.彼は,ブラックジャックに勝つ方法として「カウンティング」という方法を研究し,遂に必勝法(期待値が正になる賭け方)を探し出しました.が,カジノ側はこれに対抗してブラックジャックのルールを変更してしまったそうです.(谷岡一郎「ツキの法則」から引用.E.Thorpのカウンティング法についてはE.Thorp自身の著書「Beat The Dealer」を参考にして下さい.)

言いたいことは,ギャンブルの必勝法は,その人一人が知っているときは必勝法となりえるが,その方法が公の場で公表されれば,それは「必勝法」ではなくなるだろう,ということです.その理由から,このようなインターネットサイトで公開されたり,本で出版されたり,「科学」の名のもとに公表され検証されたりするようなギャンブルの必勝法はないということです.私の母は,よく「ギャンブルに必勝法はないよ.そんないい方法があったら,人に言わないで,自分でこっそり実行しているよ.」と言っていました.この言葉はギャンブルの必勝法をよく表しています.

では公の場で公表されない必勝法というのは,どうでしょうか.これについては,いずれ考察しますが,注意すべきことは,このような事を語って,人を騙したり詐欺に陥ったりする例は後を絶たないということです.皆さんもくれぐれもご注意を.

賭けの分類-過去の文献から

一口に「ギャンブル」や「賭け」と言っても私達がイメージする内容は様々です.ここではまず「賭け」や「ギャンブル」を分類することから始めましょう.

Ziemba, Brumell,Schwartz (1986) はギャンブルを2つの観点から合計4種類に分類しています.観点の1つは「勝つチャンスが完全に運によるか,技術を要するか」であり,もう1つの観点は「勝利による利得が,完全に運に依存する・もしくは定まっている(技術によって増減しない)か,技術によって増減するか」です.これによってギャンブルを分類すると以下の表のようになります.

勝つチャンス
完全に運によるもの  技術により増加するもの
 利得 完全に運によるか定まっているもの  宝くじ・スクラッチくじ ある試合の野球で勝利チームを当てた人の中から,抽選で1名で1万円当たると言うもの
技術により増加するもの  ロト6・ミニロト・ナンバーズ 競馬・公営競技・スポーツくじ
ブラックジャック・ポーカー

宝くじもナンバーズも,共に当たる確率は完全に運に依存しており技術に依存しません.(「ナンバーズの番号は傾向を研究すれば,当たる確率が上がる」と考えるような人は,このサイトには向きません.)ただし「宝くじ」の賞金は完全に運によって決まり技術に依存しませんが,ナンバーズやロトは,(後述するように)自分が選ぶ番号によって賞金を変化させる可能性があります.したがって,利得の分類は,宝くじとロト・ナンバーズでは異なると言えるでしょう.

競馬や競輪,賭け麻雀・賭け将棋などは技術に依存してよって勝つチャンスも利得も増加する可能性があります.右下のセルに分類されるこれらのギャンブルが,私達が一般にギャンブルと呼ぶもののほとんどを包括しています.