流域と水系の不一致

「東京の「川」の基本をつかむ」では、東京の川が10の水系からできているとした。ということは(東京湾付近はややこしいので除けば)東京都のすべての地域が10個の流域に分割できるはずだ。

この「東京の流域地図」が、どこかにあれば良いのだが、今のところ探し出せていない。国土地理院のデータを使えば自分で作ることはできるはずだが、まだそこまでには至っていない。

しかし、株式会社ヤマップが提供するYAMAP流域地図によって、これを知ることができる。YAMAP流域地図は、日本中のすべての地点が、どの水系の流域に属するかを知ることができるのだ。なんと素晴らしい!

YAMAP流域地図で、東京の様々な地点をクリックすると、確かにあらゆる地点が10個の流域のどこかに属しているように思える。おお、俺の予想は正しそうだ。だが…しかし…だ。

なんと港区のほとんどの部分(渋谷川水系と荒川水系に挟まれた部分)は、この地図で、どこの水系にも属していないのである。なんと。

そして、ここは「東京の「川」の基本をつかむ」の基礎知識2に書いた、今は暗渠化されてなくなった「赤坂川」の流域に相当していた部分と考えられる。

赤坂川問題

東京の川が10の水系からなる、との予想に対して不安はあった。それは東京地形歩きのための本「東京スリバチの達人(皆川典久著、昭文社2020年)」の章の分け方にある。

この本は「分水嶺東京北部編」と「分水嶺東京南部編」の2分冊からできていて、さらに各分冊は「水系」ごとに分かれて、章立てがなされている。それを見ると

分水嶺東京北部編:紅葉川水系、神田川水系、谷端川水系、石神井川水系、荒川水系

分水嶺東京南部編:赤坂川水系、渋谷川水系、目黒川水系、呑川水系

とある。本の序文には、以下のように書かれている:

武蔵野台地には、流域(水系)を分ける分水界が存在するので、それ以北と以南に分け、紹介の順番も水系に沿って下流から上流へと遡る形を取りました(東京スリバチの達人-分水嶺東京北部編、皆川典久著、昭文社2020年)

東京を分水嶺で流域で高低差でを分けると、このような分け方が正しいということだろうか?これは、この分野では常識なのかな。

この分け方を、先の流域に無理やり当てはめると、谷端川は神田川に、石神井川は隅田川に流れるので、両方とも荒川水系に含めることができる。しかし紅葉川と赤坂川は、既に失われているため、当てはめることが難しい。

しかし、さすが専門家の書いた本だけあって、東京都心の複雑な地形を理解するには、自分が分けた(東京都建設局の管理河川を下にした)10の水系よりも、こちらの分け方のほうが良さそうだ。自分の分け方は、あくまでも東京の現在の川を把握するための分け方であると言える。

流域と水系の定義

東京の「流域」を分水嶺と高低差で分けるとどうなるかについては、まだ勉強不足のため、今後の課題としたいが、もしそうだとすると、「川」と「流域」か1対1には対応しないということが考えられる。

これは元々あった川が埋め立てられたり暗渠化されたりしたことによって生じた矛盾のように考えられるが、よく考えると「流域」という用語の定義に関わるようにも思える。

つまり、地形の高低差と分水嶺をもとに流域を定義するならば、その流域に川が流れていないこともある。例えば、私の故郷にある倶多楽湖は、流入する河川も流出する河川もないカルデラ湖だが、どこの水系なんだ、ということになる。宮古島には川は流れてないがどこの流域なんだということになるし、鳥取砂丘や中田島砂丘などの砂丘に川は流れていないと思うが(だよね)、それはどこかの流域なのか、ということにもなる。

それと同時に「流域」という概念についても、おいおい調べていきたい。