調整ゲーム

調整ゲームはコーディネーションゲーム(coordination game)の翻訳で、協調ゲームと訳されることもあります。ざっくり言うと「他人と同じ行動を選ぶことが良い」ようなゲームです。結果となるナッシュ均衡は「全員が同じ行動を選ぶ」となるので(確率を用いる混合戦略を除く)、結果の候補が複数あることになります(複数均衡)。

女と男の戦い

ゲーム理論で最初に習う2人調整ゲームは、 以下のストーリーで表される女と男の戦い(battle of sexes)です(変な名前!でも昔は「両性の戦い」と訳されていました。これだとさらに意味不明です)。

アリスと文太は、禅寺かショッピングセンターに行く。2人は相手の行動を知らずに、どちらに行くかを選ぶ。アリスと文太は、お互いが好意を抱いているので同じ場所を選べば利得1を獲得し、さらにそれが自分が好きな場所ならば利得にもう1点が加わり2になる。違う場所を選んでしまうと(たとえ好きな場所に行ったとしても)利得は0である。

「女と男がいて、お互い同じ場所に行きたい。できれば自分の行きたいところがいい!」というそれだけのゲームです。男女が武闘しているわけではありません。この状況を利得行列にすると、以下のようになります。

女と男の戦い(battle of sexes)

この状況では、各プレイヤー(アリスと文太)はそれぞれ
(1)相手が禅を選ぶなら自分も禅を選ぶほうが良く
(2)相手がショッピングを選ぶなら、自分もショッピングを選んだほうが良い
となり、「相手と同じ行動を選ぶことが良い」となります。これが調整ゲームです。

調整ゲームの例

  • どのSNSに参加するか、という問題。自分の友人が皆んなFaceBookを選んでいるならばFBを、インスタグラムを選んでいるならインスタを選ぶことが良い。このように商品に正の外部性(自分が購入する財から得る効用は、他の消費者がそれを多く選んでいるほど高くなる)があるときの消費者の選択は調整ゲームになります。
  • 技術規格のデファクトスタンダード問題。かつてビデオデッキの開発において、各企業はVHS方式とベータ方式のどちらの規格を選ぶかという問題に直面しました。企業の選択は、多くの企業が選択するものと同じ規格を選択したほうが有利になります(wikipedia デファクトスタンダード
  • 同窓会の参加。皆んなが参加するならば、自分も参加したほうが良いけど、皆んなが参加しないなら、自分も参加しないほうが良い。
  • 右側通行か左側通行か。細い道を車ですれ違うとき、右に避けるか左に避けるか。お互いに右か左か同じルールを選ばないと衝突してしまう。

調整ゲームのバリエーション

先ほどの「女と男の戦い」では、相手と同じ行動を選ぶことが良いわけですが、各プレイヤーは、どの結果が最良であるかが異なっています。アリスにとっては2人が禅を選ぶことが、文太には2人がショッピングを選ぶことが良いわけです。このような調整ゲームは非対称(asymmetric)であると言われます。これに対して「どの結果でも、2人が会えさえすれば同じ(1点)」のように、結果に差がなく、行動が一致さえすれば良いゲームは対称(symmetric)な調整ゲーム、純粋調整ゲーム(pure coordination game)、またはマッチングゲーム(matching game)と呼ばれます(Camerar 2003)。

2人とも買い物が好きで、禅寺で会えれば1点、ショッピング・センターで会えれば2点、のようなゲームも考えられます。このゲームでは、行動が一致しないより一致したほうが良いのですが、一致したときに皆にとって利得が高い場合と低い場合があります。このようなゲームには、定着した呼び名はありません。ここではTremblay and Horton(2012)に従いパレート調整ゲーム(Pareto coordination game)と呼んでおきます。

調整ゲームのバリエーション

調整ゲームの解

調整ゲームでは、すべてのプレイヤーが同じ行動を選択することがゲームの解であるナッシュ均衡になります(他に確率を用いて選択を行う混合戦略のナッシュ均衡もあります)。例えば上述の女と男の戦いでは

(A)アリスも文太も禅寺に行く
(B)アリスも文太もショッピングに行く

という2つのナッシュ均衡があります(他に混合戦略のナッシュ均衡がある⇒最後の「注意点」を参照せよ)。実際にナッシュ均衡の求め方にしたがって利得に下線を引くと以下の図となり、両プレイヤーの利得に下線が引いてある戦略の組は、上記の(A)と(B)であることが分かります。

女と男の戦いのナッシュ均衡

このように調整ゲームでは複数のナッシュ均衡が存在し、その中でどれを起こりうる結果である「ゲームの解」とするのか、という問題が起きます。この問題は均衡選択の問題と呼ばれ、ゲーム理論の大きな研究テーマです。

このときその中の1つのナッシュ均衡が起きるとすべてのプレイヤーが共通な認識で予測できるような理由があるならば、それは解となりえます。このような皆が共通して結果として予測できるような点はフォーカルポイントと呼ばれます(Schelling (1960))。フォーカルポイントは、「社会慣習」や「これまで繰り返しプレイされてきて培われた経験」などによって形成されると言えます。

例えば上記の男と女の戦いでは、2人はいつも禅に行くことになっている(という慣習や経験があれば、2人は迷うことなく禅を選ぶでしょう。また、そのような経験がなくても「レディファースト」 (アリスに文太が譲る)という慣習があれば、やはり2人は禅を選ぶことになります。文太は、本当は2人でショッピングに行ったほうが良いのですが、アリスが禅に行くと予測するなら、ショッピングよりは禅が良い選択であり、アリスも文太が禅に行くと予測できるなら禅に行くことが良い選択です。つまりナッシュ均衡の定義である 「相手がそのナッシュ均衡の行動を選ぶなら、自分もそのナッシュ均衡の行動を選ぶことが一番良い」という条件を満たすことになります。

これに対して、上記のように2人が共通して予測できるフォーカルポイントがなければ、ナッシュ均衡は実現できるとは限りません。上記のようなゲームを実験室でやらせるとお互いが異なる行動を選び0点を食らってしまう結果も多く見られます。私も講義中にこの実験をやらせてみますが、うまくコーディネイトできるときもあれば、そうでない場合も多いです。うまくコーディネイトできない場合には、(当然ですが) 次の2つのパターンがあります:
・お互いに、自分が高い得点(2点)を選び合ってしまう。アリスが禅を、文太がショッピングを選び、お互いに0点を食らってしまう。
・お互いに、相手に高い得点を取らせようと譲ってしまう。アリスがショッピングを、文太が禅を選び、お互いに0点を食らってしまう。(私は「賢者の贈り物」パターンと呼んでいます。)

パレート調整ゲームでは、一般的にはプレイヤーにとって利得が高い<良い>ナッシュ均衡(パレート優位な均衡と呼ばれる) が望ましく、単純に考えるとそれが実現されると予想されますが、何らかの理由で両者にとって利得が低い<悪い>ナッシュ均衡が実現することも、十分あり得ます。先ほどの例2だと、2人ともショッピングに行くことで利得2が達成できるためこれが<良い>ナッシュ均衡ですが、例えば2人とも毎週毎週ずーっと禅寺に行っていることが定着していて、「相手は禅寺に行く」「相手は自分も禅寺に行くと予想するだろう」と考えれば(2人ともショッピングに行くほうが楽しいと分かっていても)禅寺に行くと考えられます。

調整ゲームにおいて、ナッシュ均衡が実現しない問題、ナッシュ均衡が実現してもパレート優位なナッシュ均衡が実現しない問題は、調整の失敗(coordination failure)と呼ばれます。

フォーカルポイントの例

単純なマッチングゲームでは、さまざまなフォーカルポイントがあると予想されますSchelling(1960)は、以下のようなゲームを(インフォーマルに)実験したようです。

  • 表(head)か裏(tail)のどちらかを選べ。2人が同じものを選んだら賞金をあげよう。
  • 好きな正の番号を選べ。2人が同じものを選んだら賞金をあげよう。
  • ニューヨークのどこかで待ち合わせをする。どこで待ち合わせをするか選べ。

何を選んでも良いのですが、お互いに同じものを選ぶと良いので「調整ゲーム」であることが分かります。賞金に差もなく個人で選ぶと良いものに違いもないので、マッチングゲームですね。

Schelling(1960)によると最初のゲームでは42人中36人がheadを、2番めのゲームでは40%が「1」を選んだといいいます。3番めの質問では多数がGrand Central StationのInformation boothだとされています。

Mehta, Starmer and Sugden (1994)は、このような実験を精緻に行っています。この研究では被験者は2つのグループに分けられ、1つのグループC (Coordination)では「(ランダムに選ばれた)相手と同じものを選んだら賞金を与える」とされ、もう1つのグループP(Picking)では「何を選んでも賞金を与えるので、好きなものを選べ」としています。上記の最初の質問では、グループCでは87%、グループPでは76%がheadを選びそれほど差がないのに対して、2番めの質問では、グループCで選ばれたのは「1」が40%に選ばれて一番多く(「7」が2番めで14%)、グループPでは「7」が一番多く11%になっています。このことからある種の質問に対して、「自分が好きなもの」を選ぶのではなく「相手と同じものを選ぶためには何が良いか」を考えてそれを選ぶというフォーカルポイントが存在するということが分かります。

SchellingやMehta達は言及していないのですが、実験結果のデータを見て私が感じたのは「皆が同じものを選ぶと賞金をあげる」と言っているのに、自分が好きな数や場所を選ぶ被験者は、少数ながら必ずいるんだな…ということです。ルールが理解できていないのか、それとも何か意図があるのか.「フォーカルポイントに従う」という行動は、「大勢」や「傾向」ではありますが、それに逆らう(理解できない?従わない?)個の存在も無視できず、それはやはり「少数」や「個性」や「多様性」と言う社会科学の重要なテーマに繋がるのだな、と思いました。

注意点

  • ここでは2人ゲームと多人数のゲームを曖昧に扱ってきましたが、厳密には分けて考えることが必要です。
  • ここでは確率を使わない行動の選択(純粋戦略)のみを考えましたが、調整ゲームには各プレイヤーが確率を使って行動を選択する混合戦略を用いたナッシュ均衡もあります。例えば女と男の戦いの例だと「アリスは禅を2/3、ショッピングを1/3で選び、文太は禅を1/3、ショッピングを2/3で選ぶ」というナッシュ均衡があります。例1のマッチングゲームだと「アリスも文太も、禅とショッピングを1/2ずつ選ぶ」というナッシュ均衡があります。
  • 相手と異なる行動を選ぶことが良いゲーム(チキンゲーム・混雑ゲーム)も広義の調整ゲームとみなされる場合があります。これはゲームの文脈を1回限りの2人のゲームと見做すか、多人数で長期間に渡って行われるゲームと考えるかで異なってきます。
  • 調整ゲームにおいて「複数の均衡の中でどれが起きるか」という問題は、ゲーム理論における均衡選択という理論によって分析されており、リスク支配という概念によって起きる結果が選ばれます。

参考文献

  • Camerar (2003), Behavioral Game Theory: Experiments in Strategic Interaction, Princeton Univercity Press.
  • Mehta, Starmer, Sugden (1994), The nature of salience: An experimental investigation of pure coordination games, The American Economic Review, Vol.84, No.3, pp.658-673.
  • Schelling(1960), The strategy of conflict, Harvard Univercity Press.
  • Tremblay and Tremblay (2012), New Perspectives on Industrial Organization: With Contributions from Behavioral Economics and Game Theory, Springer.

以下も参考にしてください。

東京都立大学 2020ゲーム理論1 オンライン講義(2020:コロナ対応)

備忘録:kindle for PCでダウンロードができないとき

書斎にあるPCのwindows10上のkindle for PCで一部の書籍がダウンロードできずに困っていました。amazonのヘルプでも全然ダメです。調べて見ると、
ツール>オプション>コンテンツ
の「My Kindle Contents」のフォルダを、/OneDrive/Documents から移動させたら、解決しました。(自分はDドライブに、Kindle Contentsというフォルダを作ってそこを指定しました)。

保存する場所がクラウドだとダメそうなのは、まあ考えてみればそうですけど、デフォルトでそこが指定されているので(どこに保存されているか考えたことなかった)、amazonには何とかしてほしいです。

以下のページを参考にしました。ありがとうございました。

Kindle for PCで洋書がダウンロードできない問題に当たった時のTodo

備忘録:TeXの自作カウンター:addtocounter{num}{1}とstepcounter{num}の違い、親カウンターと子カウンター

レポート課題をTeXで作成するにあたり、レポート番号を自作カウンターで振っていた。各レポートの最初に出力される定形文で、カウンターが1つずつ更新される仕組みにしていた。

%宿題の定型文
\newcommand{\teikei}{
\addtocounter{reportnumber}{1}
\setcounter{problemcounter}{0}
\clearpage
\textbf{\LARGE レポート課題\arabic{reportnumber} }
\par\vspace{3mm}
\begin{shadebox}
\begin{itemize}
\item 提出課題を解きkibacoに答を入力して下さい。
\item 自習課題は提出する必要はありません。理解を深めるために自習しましょう。
\end{itemize}
\end{shadebox}
}

図表の番号は、各レポートごとに分けて出力したい。そこで
http://rexpit.blog29.fc2.com/blog-entry-99.html
などを参照して

\makeatletter
	\renewcommand{\thefigure}{% 図番号の付け方
	\thereportnumber.\arabic{figure}}
	\@addtoreset{figure}{reportnumber}
	\renewcommand{\thetable}{% 表番号の付け方
	\thereportnumber.\arabic{table}}
	\@addtoreset{table}{reportnumber}
\makeatother

としてみた。

ところが、これでは各レポートごとに図表番号が初期化されない。レポート1で図1.1、図1.2と出力されたあと、レポート2では図2.1と出力して欲しいのに、図2.3になってしまう。

上記の参照記事だと、カウンターはデフォルトでリセットされるはずなんだけど…

問題は

\addtocounter{reportnumber}{1}

にあった。カウンターを1つずつ進めるには

\stepcounter{reportnumber}

を使う。そうすると@addtoresetというコマンドによって、カウンター
reportnumber がstepcounterによって増えるたびにリセットされるようだ。

\@addtoreset{カウンタ}{親カウンタ}:親カウンタが増えると(子)カウンタがリセットされる。

なるほど、親カウンターと子カウンターという概念があるんだ。知らなかった。

あれ?そうすると、待てよ。problemcounterというカウンター(問題番号をカウントする)を作っているんだが...レポート番号をリセットするためにヘッダーに

カウンターの定義
\newcounter{problemcounter}

各問題ごとにカウンターを進めるとき
\addtocounter{reportnumber}{1}  %これまで
\setcounter{problemcounter}{0}  %ヘッダーでカウンターをリセット

としてきた。こちらも親カウンターをreportnumberと考えて

カウンターの定義
\newcounter{problemcounter}[reportnumber]
\stepcounter{reportnumber}

とすれば良くて、\setcounter{problemcounter}{0} はいらないのではないかな?

やってみるとうまく行って、その通りだった。なるほど!!

次の問題:
\label{…}、\ref{…}で親カウンターを含めて参照するにはどうしたらいいんだ??

備忘録:UTAUで[Raise by generate-betch-process]というエラーが出るとき

MIDIファイルを読み込んで、歌わせようとした時に起きました。
左上の「テンポ」の設定に、バカでかい数字が入っていました。
これを適当な数字に変えると修正できました。

以下のサイトを参考にしました、ありがとうございました。
UTAUのエディターで「0 で除算しました」というメッセージが出るときの解決方法

下のYahoo!掲示板で質問している人にも教えてあげたいです。

【緊急】UTAUで再生しようとして再生ボタンを押すと
「[Raised by generate-batch-process]パスが見つかりません。」
と表示されて再生ができなくなってしまいました。

たぶん同じ症状だと思う。

クールノー競争とベルトラン競争関連のページ

クールノー競争とベルトラン競争に関して来られる方が多いので、関連する資料をまとめておきます。

初歩から学ぶゲーム理論-web講義:関連ページ

オンライン講義

2020年東京都立大学「ゲーム理論1」オンライン講義(youtube):コロナ対応

講義資料(ゼミナールゲーム理論入門:第5章)

首都大学東京「ゲーム理論1」の講義資料から、テキストである「ゼミナールゲーム理論入門」の第5章講義する部分のスライドです。テキストの内容に沿っています。クールノー競争、ベルトラン競争、シュタッケルベルグ競争に相当する部分です。
数値例と演習になります。文字式による一般的な計算はORセミナーのスライドのほうがいいです。

講義資料(ORセミナー)

「技術者のためのゲーム理論の基礎(2)-初歩から学ぶクールノー競争とベルトラン競争」スライド

  • 2015年のORセミナーでの講演を修正したものです。理系の技術者を対象にクールノー競争やベルトラン競争を講義し、そこから経営戦略論や産業組織論を学ぶことにつなげようというねらいです。ORセミナー2014年「技術者のためのゲーム理論の基礎(1)」のゲーム理論入門はこちらにあります。

クールノー競争とベルトラン競争入門(4):図と最適反応関数で理解するクールノー競争

クールノー競争の価格・生産量と社会的総余剰では、2社のクールノー競争におけるクールノー均衡を求める方法を説明しました。ここではそれを「最適反応曲線」(反応曲線、最適反応関数)と呼ばれる図で説明し、ナッシュ均衡との関連をより明確にします。

モデルの設定(再掲)

クールノー競争の価格・生産量と社会的総余剰で説明した設定を再掲します。そこから読んでいる方は、ここは飛ばして構いません。

  • 同じ製品を販売している企業AとB。
  • AとBの生産量をそれぞれ\(x_A,x_B\)とする。
  • 市場全体の生産量を\(x=x_A+x_B\)とし、その価格\(p\)は$$p=a-bx$$で与えられるとする。
  • 製品1単位の費用(限界費用)はAもBも\(c\)で同じとする。
  • 企業Aの利益を\(\pi_A\)とおく。$$\pi_A=px_A-cx_A$$。
  • 企業Aの利益\(\pi_A\)を最大にする\(x_A\)を考える。\(p=a-bx\)を代入し、\(x=x_A+x_B\)に注意すると\[ \begin{align} \pi_A &=\{a-b(x_A+x_B)\}x_A-cx_A\\&=-bx_A^2-bx_Ax_B+(a-c)x_A \tag{1} \end{align}\]とる。
  • 式(1)を最大にする\(x_A\)を求めるため、\(x_A\)で微分して0になるところを求める。(1)を\(x_A\)で微分すると、\(-2bx_A-bx_B+(a-c)\)。したがって\[-2bx_A-bx_B+(a-c)=0\]を解けば良く、これより\[x_A=-\frac{1}{2}x_B+\frac{a-c}{2b} \tag{2}\]となる。
  • 企業Bの利益を\(\pi_B\)とおく。$$\pi_B=px_B-cx_B$$。
  • 企業Bの利益\(\pi_B\)を最大にする\(x_B\)を求めると、\[x_B=-\frac{1}{2}x_A+\frac{a-c}{2b} \tag{3}\]となる。
  • 式(2)と式(3)を、それぞれ「企業Aの最適反応関数」「企業Bの最適反応関数」と呼びます。
  • 式(2)は企業Bの生産量\(x_B)\が与えられたときに、企業Aの利益を最大にする企業Aの生産量を表しています。
  • 式(3)は企業Aの生産量\(x_A)\が与えられたときに、企業Bの利益を最大にする企業Bの生産量を表しています。

最適反応関数を図で書く-最適反応曲線

上記の最適反応関数を横軸に(x_A)、縦軸に(x_B)にした図(グラフ)に描いてみます。まず式(3)の企業Bの最適反応関数から考えてみます(⇒なぜなら、左辺は縦軸、右辺は横軸のグラフに慣れている人が多いからです)。式(3)のグラフを書いてみると、以下のようになります。

企業Bの最適反応曲線

この式は切片が\(\frac{a-c}{2}\}で、傾きが-1/2の右下がりの直線になります。これは企業Aの生産量が与えられると、そのとき企業Bの利益が最大になる生産量がいくつであるかを示す曲線になるわけです。企業Bは、もし企業Aの生産量が決まれば、自分がもっとも利益が高くなる生産量が分かるわけですが、企業Aの生産量は決まっていません。そこでこれに式(2)の企業Aの最適反応曲線を描き、重ねてみます。

 

企業Aと企業Bの最適反応曲線

企業Aは、企業Bと縦軸と横軸が逆になりますね。切片と傾きは同じです。企業Aは、もし企業Bの生産量が決まれば、自分の利益を最大にする生産量が分かるわけですが、企業Bの生産量は決まっていません。

企業Bの生産量が決まらないと企業Aの生産量が決まらず、企業Aの生産量が決まらないと企業Bの生産量が決まらない。そこで「お互いが最適反応となる生産量の組」を選び合うことが答となると考えます。これがナッシュ均衡、またはクールノー均衡(またはクールノー=ナッシュ均衡)と呼ばれるものです。

ナッシュ均衡は20世紀半ばにゲーム理論で考えられたものですが、寡占市場の分析に限ると、それより100年以上も前にクールノーが上記の解を考えていたことによるため、このように呼ばれます。

お互いが最適反応となる生産量の組は、両方の直線が交わった点です(次の図)。この点は、式(2)と式(3)の連立方程式を解くことによって求められます。これを求めると、\[x_A=x_B=\frac{a-c}{3}\]となります。

 

クールノー均衡

以下も参考にして下さい。

ナッシュ均衡の求め方:2人ゲームの利得行列の場合

ここではゲーム理論におけるナッシュ均衡を求める方法について。「プレイヤーが2人で混合戦略(確率を用いる戦略)を考えない場合」について説明します。ゲーム理論の基本中の基本と言えます。

  • 混合戦略(確率を用いる戦略)のナッシュ均衡の求め方こちら
  • クールノー均衡の求め方はこちら
  • ナッシュ均衡とは何かはこちら
  • ナッシュ均衡の概念を理解するおけいこはこちら

ナッシュ均衡の求め方

ナッシュ均衡は「すべてのプレイヤーが最適反応戦略(利得が最も高くなる戦略)を選び合う戦略の組み合わせ」ですから、以下の方法で求めることができます。

  • STEP1 プレイヤー1の立場で考える。
    • 相手(プレイヤー2)のすべての戦略に対して、プレイヤー1がもっとも利得が高くなる戦略をチェックする(プレイヤー1の最適反応戦略)。ここでは利得に下線を引く。
  • STEP2 プレイヤー1の立場でチェックが終わったら、プレイヤー2の立場で考える。
    • 相手(プレイヤー1)のすべての戦略に対して、プレイヤー2がもっとも利得が高くなる戦略をチェックする(プレイヤー2の最適反応戦略)。ここでは利得に下線を引く。
  • STEP3 すべてのチェックが終わったら、両プレイヤーの利得に下線が引かれているのがナッシュ均衡。(利得ではなく、戦略の組であることに注意!)

例題

以下の利得行列でナッシュ均衡を求めてみましょう。

ナッシュ均衡を求めてみよう

今回は、ナッシュ均衡を求める手順を習得することが目的なので、ストーリーは特につけずに、単なる記号で利得行列を考えます。利得行列の読み方が不安、分からないって方は、こちらをご覧ください。

STEP1 まず、プレイヤー1の立場で考えます。相手(プレイヤー2)のすべての戦略に対して、プレイヤー1がもっとも利得が高くなる戦略(最適反応戦略)をチェックし、利得の下に下線を引いて行きます。

1.1 プレイヤー2がLという戦略を選んだ場合を考えます。プレイヤー1はTを選べば利得3、Bを選べば利得2です。したがってプレイヤー1はTを選びます(TがLに対する最適反応戦略)。そこでTを選んだ時の利得3に下線を引きます。

プレイヤー2のLに対するプレイヤー1の最適反応戦略はT

1.2 プレイヤー2がMという戦略を選んだら?プレイヤー1はTを選べば利得0、Bを選べば利得1です。したがってプレイヤー1はBを選びます(BがMに対する最適反応戦略)。そこでBの利得1に下線を引きます。

プレイヤー2のMに対するプレイヤー1の最適反応戦略はB

1.3 最後にプレイヤー2がRという戦略を選んだ場合を考えます。プレイヤー1はTを選んでも、Bを選んでも利得は2で同じです。この場合はTとBの利得2の両方に下線を引きます( TもBもRに対する最適反応戦略)。

プレイヤー2のRに対するプレイヤー1の最適反応戦略はTとB

STEP2 プレイヤー1に対する検討が終わったので、次にプレイヤー2の立場で考えます。相手(プレイヤー1)のすべての戦略に対して、プレイヤー2の利得がもっとも高くなる戦略(最適反応戦略)をチェックし、利得に下線を引いて行きます。

2.1 プレイヤー1がTという戦略を選んだ場合を考えます。プレイヤー2はLを選べば利得4、Mを選べば利得2、Rを選べば利得0です。したがってプレイヤー2はLを選びます(LがTに対する最適反応戦略)。そこでLの利得4に下線を引きます。

プレイヤー1のTに対するプレイヤー2の最適反応戦略はL

2.2 最後にプレイヤー1がBという戦略を選んだ場合を考えます。プレイヤー2はLを選べば利得2、Mを選べば利得3、Rを選べば利得9です。したがってプレイヤー2はRを選びます(RがBに対する最適反応戦略)。そこでRの利得9の下に線を引きます。

プレイヤー1のBに対するプレイヤー2の最適反応戦略はR

STEP3これでプレイヤー1とプレイヤー2のすべてのチェックが終わりました。プレイヤーの両方の利得に下線が引かれている戦略の組がナッシュ均衡です!「

ナッシュ均衡は(T,L)と(B,R)

ナッシュ均衡は「プレイヤー1はTを選び、プレイヤー2はLを選ぶ」「プレイヤー1はBを選び、プレイヤー2はRを選ぶ」の2つです。このようにナッシュ均衡は複数出てくる場合があります(これが悩みの種)。これを(T,L)と(B,R)のように、ベクトルのように書く場合もあります。

ナッシュ均衡は「戦略の組 (profile of strategies)」なので、戦略の組として答えます。「ナッシュ均衡は(3,4)と(2,9)です」などと答えては間違いです。それは利得の組ですから。「Tがナッシュ均衡」などと答えても間違いです。Tはプレイヤー1の戦略(a strategy of player 1)です。戦略の組み合わせではありません。

東京都立大学 2020ゲーム理論1 オンライン講義(2020:コロナ対応)

クールノー競争とベルトラン競争入門(3):クールノー競争の価格・生産量と社会的総余剰

独占市場における価格と生産量の決定を理解したとして、ここでは2社のクールノー競争の価格と生産量の決定、および社会的総余剰の計算について説明します。

クールノー競争の価格と生産量の決定:モデル

ここでは同質財を販売している2社の生産量競争を考えます。一般にクールノー競争と呼ばれるのは、このモデルです(不完全競争市場の分類)。

  • 企業AとBが同じ製品(同質財)を販売するとします。AとBの生産量をそれぞれ\(x_A,x_B\)とし、AとBは\(x_A,x_B\)を決定するとしましょう。
  • 市場全体の生産量を\(x=x_A+x_B\)に対して、その価格\(p\)は$$p=a-bx$$で与えられるとします。
  • ここで製品を1単位の費用(限界費用)はAもBも\(c\)で同じであり、生産量にかかわらず一定とします。簡単にするため固定費は考えません。
  • AとBは利益を最大にすると考えます。AとBは、生産量\(x_A、x_B\)をいくらにするでしょうか。

問題の解法

問題は以下のようにして解くことができます。

  • 企業Aの利益を\(\pi_A\)とおく。ここで(利益)=(収入)-(費用)であり、収入は(価格)\(\times\)(生産量)、費用は(限界費用)\(\times\)(生産量)となります。したがって$$\pi_A=px_A-cx_A$$となります。
  • この\(\pi_A\)を最大にする\(x_A\)を考えます。そこで\(p=a-bx\)を代入し、さらに\(x=x_A+x_B\)に注意すると\[ \begin{align} \pi_A &= px_A-cx_A \\ &=(a-bx)x_A-cx_A \\&=
    \{a-b(x_A+x_B)\}x_A-cx_A\\&=-bx_A^2-bx_Ax_B+(a-c)x_A \tag{1} \end{align}\]となります。
  • この式(1)を最大にする\(x_A\)を求めるには、ざっくり言うと\(x_A\)で微分
    (正確には偏微分)して0になるところを求めれば良い。(1)を\(x_A\)で微分すると、\(-2bx_A-bx_B+(a-c)\)となります。したがって\[-2bx_A-bx_B+(a-c)=0\]を解けば良く、これより\[x_A=-\frac{1}{2}x_B+\frac{a-c}{2b} \tag{2}\]となります。
  • 式(2)は、企業Aの最適反応関数と呼ばれます。式(2)は\(x_B\)が与えられたときに企業Aの利益を最大にする企業Aの生産量を表しています。したがって、企業Bの生産量が決まれば、企業Aとの最適な生産量(答)が決まるのですが、企業Bの生産量がいくらになるか分かりません。そこで企業Bが利益を最大にする生産量を同様に求めてみます。
  • 企業Bの利益を\(\pi_B\)とおきます。$$\pi_B=px_B-cx_B$$であり、企業Aの場合と同様に\(p=a-bx\)を代入して計算し、$$\pi_B=-bx_B^2-bx_Ax_B+(a-c)x_B$$を得ます。さらに\(x_B\)で微分して0になるところを求めると、\[x_B=-\frac{1}{2}x_A+\frac{a-c}{2b} \tag{3}\]となります。
  • この式(3)は、企業Bの最適反応関数と呼ばれます。企業Aと同様に\(x_A\)が与えられたときに、企業Bの利益を最大にする企業Bの生産量を表しています。
  • ここで、企業Aは企業Bの生産量が分からなければ、利益を最大にする生産量が分からず、企業Bは企業Aの生産量が分からなければ、利益を最大にする生産量が分かりません。ここでゲーム理論のナッシュ均衡の概念により解を求めるわけです。ナッシュ均衡は、お互いが最適反応戦略を選び合うような戦略の組み合わせで、ここでは式(2)と式(3)を同時に満たす\(x_A\)、\(x_B\)となります。
  • 式(2)と式(3)を同時に満たす\(x_A\)、\(x_B\)は、これらを連立方程式で解くことによって求められます。式(3)の\(x_B\)を式(2)に代入して計算すると\(x_A=-\frac{1}{4}x_A+\frac{a-c}{4b}\)となり、これから\(x_A=\frac{a-c}{3b}\)を得ます。またこれを式(2)に代入して、\(x_B=\frac{a-c}{3b}\)を得ます。
    このときの価格は\[p=a-bx=a-b(x_A+x_B)=\frac{a+2c}{3} \]となります。
  • このとき企業Aの利益は\[ \begin{align} \pi_A &= px_A-cx_A =(p-c)x_A\\ &=\left(\frac{a+2c}{3}-c\right)\left(\frac{a-c}{3b}\right)=\frac{(a-c)^2}{9b} \end{align}\] となります。同様に企業Bの利益も同じになります。

まとめますと、クールノー競争における企業Aと企業Bの生産量は\(x_A=x_B=\frac{a-c}{3b}\)となります。これをクールノー均衡と呼びます。クールノー均衡における価格は\(p=\frac{a+2c}{3}\)、各企業の利益は\(\pi_A=\pi_B=\frac{(a-c)^2}{9b}\)となります。

消費者余剰、社会的総余剰

独占市場における、消費者余剰、生産者余剰、社会的総余剰について示します。

市場全体の取引量が\(x=x_A+x_B=\frac{2(a-c)}{3b}\)であることに注意すると、上記で求めたクールノー競争の価格と生産量と企業の限界費用は、以下の図で示すことができます。

クールノー競争における生産量・価格・社会的総余剰

消費者余剰は、図の青色で示された部分の三角形です。

三角形の底辺の長さは\(\frac{2(a-c)}{3b}\)、高さは\[ a-\frac{a+2c}{3}=\frac{2(a-c)}{3} \]ですから、三角形の面積は\[ \frac{1}{2} \times\frac{2(a-c)}{3b} \times \frac{2(a-c)}{3}=\frac{2(a-c)^2}{9b} \]となります。

企業の利益は、図の緑色の部分の長方形の面積です。

長方形の高さ(価格-限界費用)は、\(\frac{a+2c}{3}-c=\frac{a-c}{3}\)、ヨコの長さは\(\frac{2(a-c)}{3b}\)ですので、長方形の面積は\[\frac{a-c}{3}\times\frac{2(a-c)}{3b}=\frac{2(a-c)^2}{9b}\]となります。先に求めた企業の利益を合計した値(\(\pi_A+\pi_B\))と一致することがわかりますね。これを生産者余剰とも呼びます。

社会的総余剰は、消費者余剰と生産者余剰の総和です。したがって社会的総余剰は
\[\frac{2(a-c)^2}{9b}+\frac{2(a-c)^2}{9b}=\frac{4(a-c)^2}{9b}\]です。

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クールノー競争とベルトラン競争入門(2):独占市場の価格・生産量と社会的総余剰

クールノー競争は、2社以上の企業が利益を最大化するように生産量を決める生産量競争です。その考え方の基本となるのは、企業が1社のときの独占市場の生産量決定です。1社のときが分からないで、2社以上の場合が分かることがあろうか。いやない。(反語)。ここでは独占市場において、生産量と価格がどのように決定されるかを示します。

独占市場の価格と生産量の決定:モデル

ここでは以下の例を考えます。

  • 企業Aがある製品を独占的に販売しているとし、その生産量\(x\)を決定するとしましょう。
  • 生産量\(x\)に対して、その価格\(p\)は$$p=a-bx$$で与えられるとします。
    • ここでは生産量=需要量(取引量)となるように価格が決定されるとします。すなわち在庫は考えず、すべての生産量が売り切るように価格がつくと考えます。
    • したがって、たくさん生産すると取引量は多いのですが、価格が下がり、儲かりません。価格を高くしようとすると少なく生産しなければならず、その生産量が少なすぎても儲かりません。すなわち、価格と生産量の間にトレードオフがあり、そのもとで、企業Aは生産量\(x\)を決定する問題を考えます。
    • なお「価格が\(p\)のとき、需要を\(x\)とすると、\(x=\alpha – \beta p\)となる」のように、需要関数が与えられる場合もあります。その場合は、 生産量=需要量(販売量)となることから、\(x\)を生産量と考えて、\(p=(\alpha/\beta)-(1/\beta)x\)のように\(p\)の式に変換すれば良いわけです。\(a=\alpha/\beta\)、\(1/\beta\)とおくと、上記の設定になります。
  • ここで製品を1単位売る費用(限界費用)は\(c\)とし一定とします。簡単にするため固定費は考えません。
  • 企業Aとは利益を最大にするように、この製品の生産量\(x\)を決定するとします。\(x\)はいくらになるでしょうか。

問題の解法

問題は以下のようにして解くことができます。

  • 企業Aの利益を\(\pi\)とおく。ここで(利益)=(収入)-(費用)であり、収入は(価格)\(\times\)(生産量)、費用は(限界費用)\(\times\)(生産量)となります。したがって$$\pi=px-cx$$となります。
  • この\(\pi\)を最大にする\(x\)を求めれば良いわけです。そこで \(p=a-bx\) を代入して\(x\)だけの式にすると\[ \begin{align} \pi &= px-cx \\ &=(a-bx)x-cx \\&=-bx^2+(a-c)x \end{align}\]となります。
  • この式を最大にする\(x\)を求めるには、ざっくり言うと\(x\)で微分して0になるところを求めれば良い。\(-bx^2+(a-c)x\)を \(x\)で微分すると、\(-2bx+(a-c)\)となります。したがって\[ -2bx+(a-c)=0 \]を解けば良く、これより\(x=\frac{a-c}{2b}\)が求める生産量(最適生産量)となります。
  • このときの価格は、\(p=a-bx^*=\frac{a+c}{2}\)となります。
  • このとき企業の利益は\[ \begin{align} \pi &= px-cx =(p-c)x \\ &=(
    \frac{a+c}{2}-c)(\frac{a-c}{2b})=\frac{(a-c)^2}{4b} \end{align}\] となります。

消費者余剰、社会的総余剰

独占市場における、消費者余剰、生産者余剰、社会的総余剰について示します。

上記で求めた独占市場の価格と生産量と企業の限界費用は、以下の図で示すことができます。

独占市場における消費者余剰・生産者余剰

消費者余剰は、図の青色で示された部分の三角形です。

(なぜこの部分が消費者余剰になるかは、ミクロ経済学のテキストなどを参照してください。なお拙著「ゼミナールゲーム理論入門」の5章にも、独占やクールノー競争での消費者余剰や社会的総余剰の数値例による初歩的な解説があります)。

三角形の底辺の長さは\(\frac{a-c}{2b}\)、高さは\[ a-\frac{a+c}{2}=\frac{a-c}{2} \]ですから、三角形の面積は\[ \frac{1}{2} \times\frac{a-c}{2b} \times \frac{a-c}{2}=\frac{(a-c)^2}{8b} \]となります。

企業の利益は、図の緑色の部分の長方形の面積です。

なぜかと言うと、製品1単位の利益は長方形の高さ(価格-限界費用)になり、これに長方形のヨコの長さ(取引量)をかけたものが利益となるからです。なお

長方形の高さ(価格-限界費用)は、\(\frac{a+c}{2}-c=\frac{a-c}{2}\)、ヨコの長さは\(\frac{a-c}{2b}\)ですので、長方形の面積は\[\frac{a-c}{2}\times\frac{a-c}{2}=\frac{(a-c)^2}{4b}\]となります。先に求めた値と一致しますね。これを企業の生産者余剰とも呼びます。

社会的総余剰は、消費者余剰と生産者余剰の総和です。したがって社会的総余剰は
\[\frac{(a-c)^2}{8b}+\frac{(a-c)^2}{4b}=\frac{3(a-c)^2}{8b}\]です。

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Surface Pro LTE が携帯電話ネットワークに接続しない

SIMカードをsurface pro LTEに挿入して、ネットワークに接続しようと試みたが、うまく行かなかった。かなり苦労して、うまく行ったので、ここに記しておきます。

症状

b-mobileから12ヶ月有効のSIMカード(bmobile 7GBプリペイドSIM)を購入。開通の手続き後にsurface pro LTEに挿入して、ネットワークに接続しようと試みたが、うまく行かなかった。

  • 設定>ネットワークとインターネット>携帯電話の画面へ行くと、NTT DOCOMO(HSDPA)という文字は出ているが、「切断済み」となったままでネットに接続されない。
  • うまく行かなかったSIMカードを別のタブレットに差したところ問題なく動いた(SIMカードに問題はない)
  • 詳細オプションでAPNを設定する。間違ってはいないように思える。
    • APN: bmobile.ne.jp
    • ユーザー名: bmobile@4g
    • パスワード: bmobile

記事を検索

ネットで検索し、同様の症状で困っている記事を多く発見、いろいろ試してみる。

うまくいく可能性の高い記事

いろいろ探しているうちに、可能性の高い記事を見つける。それは「APNの種類ーインターネットおよびアタッチ」を選択しなければならない、というもの。

2021/12/16 追記 新しいSIMで同様の症状になったのだが、このときもインターネットおよびアタッチの選択により解決。このときは再起動は不要だった。

「これではないか?」と思ったものの、「APNの種類」という項目が見当たらない。でもこれは何か見たことがあるぞ、どこかにあったような…さらに調べてみると

「APNの種類」を一度誤って設定して保存した場合は、「追加したAPNをすべて削除した上で、あらためて「APNを追加します」をクリックし、APNの再設定を行う必要がある

ということ。

これでうまくいくと確信し実行したが、うまく行かない!?

自分の経験上、こういうときは再起動が必要だと思い、やってみるとその通り。うまく接続できました。

まとめ

まとめてみると、以下のようになる。

Surface Pro LTE が携帯電話ネットワークに接続しないとき。

  • まず現在のAPN設定を全部削除する。念のため、ここで再起動しておいたほうが良い。
  • 新規にAPNを追加し、APNのプロファイル(プロファイル名は何でも良い。 APN名、 ユーザー名、パスワード)を誤りなく設定する。
  • 認証タイプ: CHAP、IPの種類:Ipv4 にする。
  • APNの種類:「インターネットおよびアタッチ」を選択
  • このプロファイルを適用するにチェックマークを入れて保存し、左上の矢印←で1つ前の画面に戻る。
  • ここで再起動する。
    • 2021/12/16追記 このときは再起動は不要ですぐ繋がった。

うまくいくと、設定>ネットワークとインターネット>携帯電話の画面で
NTT DOCOMO(HSDPA) 切断済み
となっていた表示が
NTT DOCOMO(LTE) 接続済み
に変わります。

またこの画面で詳細オプションをクリックし「インターネットAPN」を見ると、接続できていなかった時は「適用済み」としかなっていなかった表示が、「アクティブ化済み」に変わっています。

2021/12/16 追記 このときは、「インターネットAPN」と「APNを添付する」の2つに新しい設定が作られて、インターネットAPNは「ライセンス認証済み」、APNを添付するでは「適用済み」という表示になっていた。