戦略形ゲームは、展開形ゲームと並ぶ非協力ゲームの表現形式です(参照:戦略形ゲームと展開形ゲーム)。戦略形ゲームは、プレイヤー、戦略、利得の3つの要素から構成されます。すべてのプレイヤーは同時に戦略を選び、その結果、各プレイヤーの利得が決まります。
戦略形ゲームの例
戦略形ゲームの例として、次のような問題を考えてみましょう。
戦略形ゲームの例(コンビニ戦争1):2つのコンビニ、セレブ(セレブイレブン)とファミモ(ファミリーモール)が、まだコンビニがないA駅とB駅のどちらか一方に出店しようと考えている。コンビニを1日に利用する客はA駅が600人、B駅が300人である。セレブとファミモがもし違う駅を選べば、利用客を独占できる。しかし同じ駅に出店すると、ファミモが人気で、ファミモはセレブの2倍の客数を獲得できる。すなわち両方がA駅に出店すると、セレブ200人、ファミモ400人。B駅に出店すると、セレブ100人、ファミモ200人である。ここで客数を利得と考える。セレブとファミモはどちらの駅に出店するだろうか?
本題に入る前に言っておきたいのですが、別にこのページはコンビニの戦略の話をしたいのではなくて、ゲーム理論とは何かを話すための「例」ですからね。「両方に出店するというのはないのでしょうか」とか聞く人がいるけど(本当にたくさんいる)、そうしたければ、そういう例を勝手に考えてください。むかし、あるビジネス系の雑誌に、こういう例を出したら、雑誌の編集部の人がコンビニの会社の人に聞きに行って、そしたら「うちには『客を取り合う』という発想はない。2つのコンビニに同じ駅に出店すると集積効果があって、利用客は増える」とか言われてしまったのですが、そうならば、そういう例を作ればいいですよ。でも増えたりしたら、例として分かりにくいじゃないですか。ここはリアリティを求めてるんじゃなくて、わかりやすい例にしてるんです。
で、本題です。上記の例の場合、戦略形ゲームの3要素(プレイヤー、戦略、利得)は
- プレイヤー:セレブとファミモ
- セレブの戦略:A駅に出店する、B駅に出店する
- ファミモの戦略:A駅に出店する、B駅に出店する
- 利得:上記に書かれている客数
のようになります。このようにプレイヤーが2人のゲームを2人ゲームと呼び、その中でも両プレイヤーの戦略の数が2つの場合は2✕2ゲーム(ツーバイツーゲーム、と呼ぶ)と呼ばれます。2✕2ゲームは、戦略形ゲームの中で最も簡単なゲームであると言えます。
「利得は上記に書かれている」と言われても見にくいので、このような2人戦略形ゲームを表すには、以下のような利得行列という表を使います。
この表では、セレブが行(水平方向)を選択し、ファミモが列(垂直方向)を選択し、交わったセルの左側の数値がセレブの利得、右側の数値がファミモの利得を表します。例えば、セレブがA駅、ファミモがB駅を選ぶと…
このようになり、セレブの利得が600、ファミモの利得が300になることが分かります。
利得行列にはいろいろな書き方があり、下の図のようにセルを左下と右上に区切り、左下に第1プレイヤー(行を選ぶプレイヤー、今回はセレブ)の利得、右上に第2プレイヤーの利得を書く場合もあります。
ゲームを解く
戦略形ゲームにおいて、「プレイヤーが選ぶ戦略の組合せはどこになるのか」を求めることをゲームを解くと呼びます。ゲームを解くポイントは、支配戦略とナッシュ均衡です。