それ「協力ゲーム」じゃないから

ゲーム理論において、間違いられやすい用語は「協力ゲーム」だ。

多くの場合、世の中の状況は「競争」と「協力」に分けられる。
そこで、一般の人(?)は、競争を非協力ゲーム、協力や協調を協力ゲームと呼びがちだ。

呼びがちな人にとって競争とは、「一方が勝ち、一方が負ける」ような状況、例えば、将棋とか囲碁などの遊戯の<ゲーム>、スポーツなどを意味している。
一方、協力とは、交渉とかコーディネーションや囚人のジレンマなどなど、両者の行動によっては、良くなるウィンウィンの状態が存在する状況を意味しているように思える。

ゲーム理論では、上記の状況は両方とも非協力ゲームとして分析される。
あえて上記の状況を呼ぶのならば、競争はゼロサムゲームで、協力はノンゼロサムゲームである。

非協力ゲームと協力ゲームとは何かについては、別の記事に書いてあるが、ここでは使われている用語から見分ける方法を書いておこう。

利得行列、戦略、行動、ゲームの木、ナッシュ均衡、進化などの用語が使われているならば、それは非協力ゲーム。
特性関数、コア、シャープレイ値、仁などの用語が使われていれば、それは協力ゲームである。

静岡大学集中講義「社会システム工学」 講義情報

2024年度

2024年9月に非常勤で集中講義を予定している静岡大学工学部数理システム工学科の講義「社会システム工学」の講義情報です。ゲーム理論を講義します。

受講生の皆さんはLecShizu(静岡大学LMSサイト@工学部)の情報も参考にしてください。宿題や演習は、そちらにあります。

以下の講義資料は、変更されることがあります。

オンデマンド学習について

すべてではありませんが、講義内容に沿った動画をオンデマンドで見ることができます。以下を参照してください。
http://nabenavi.net/gametheory/

この動画は文系(東京都立大学経済経営学部)向けのものなので、本講義にある「数式の表記について」という部分に対応している動画はありません。しかし、宿題や演習には十分対応できると思います。詳細はLecShizuやガイダンス資料を参照してください。

一歩ずつ学ぶ ゲーム理論

裳華房から2021年秋に出版された「一歩ずつ学ぶ ゲーム理論-数理で導く戦略的意思決定-」のページです。

裳華房のページへのリンク

アマゾンのページへのリンク

正誤表

本にはいくつか誤りがあり、ご迷惑をおかけしています。以下に正誤表(PDF)があります。
ご指摘いただいた方々、特に千葉大学の岸本先生とそのゼミの皆さんには感謝致します。

正誤表(2023.1.31)

演習問題解説

各章末の演習問題で、難しいと思われる問題や、詳しい説明が必要と考えられる問題についての解説(PDF)です。

演習問題の解説(ver. 3 2023.01.31改訂)

なお、裳華房の本書のWebページにも同じものが掲載されています。

本の特長

  • 初めて学ぶ者も数式でゲーム理論を理解できるように、分かりやすい言葉で、省略することなく丁寧に、一歩一歩独りでも学ぶことができることを目指した教科書。
  • ゲーム理論を学ぶ本は、もはや専門書ではなく、教科書・テキストであるとの考え方に立って、さまざまな工夫をした。
  • 数式による定義は必ず言葉で言い換えて、例を使って説明し、必要なものには図解を加えるように心がけた。
  • 集合の用語や引数や述語論理の使い方など、数学に慣れた者には当たり前であっても、初学者が引っかかってしまう数学の概念には数学表現のミニノートとして解説を加えた。
  • 本書で何を学ぶのかについては最初のプロローグに示して、読者がどこまで学習したかが分かる地図を作り、各章のはじめに地図と現在の位置を示した。本文の中で重要な部分は太字にし、checkマークのアイコンを付けた。
  • 章のはじめにはキーワードを示し、終わりにはまとめを置いた。
  • 章末の演習問題を充実させて、解答をつけるのはもちろんのこと、難しい問題には(ネット上に)解説も示した(上記)。

「ゼミナールゲーム理論入門」との違い

「ゼミナールゲーム理論入門」は、図や数値例でゲーム理論の考え方を学ぶようになっていますが、概念の定義は言葉だけでなされています。また、独占やクールノー競争、オークションなど、経済学的な例をやや多く用いています。

これに対して「一歩ずつ学ぶ ゲーム理論」は、企画段階では「理工系のためのゲーム理論入門」という名前であったように、概念の定義に数式も用い、その意味を図や数値例で理解して、(まさに一歩づつ)ゲーム理論を学ぶようになっています。道路の混雑、交渉、投票、コーディネーションなど、例も盛り込んではあるものの、理論を学ぶことに重点を置いています。また「ゼミナール…」より、ややページ数を少なくしています。

図解雑学ゲーム理論

ナツメ社の図解雑学シリーズから、私の著書「図解雑学ゲーム理論」が2004年8月14日に出版されました。皆さんに愛され18刷まで出ました。残念ながら2018年を持って紙での媒体は絶版となりました。

現在はkindle版として販売されています。 
韓国語にも翻訳されました。


現在、この本は日経BP社「ビジュアル ゲーム理論」として書き直され、新しく生まれ変わっています。

ゼミナールゲーム理論入門

「ゼミナール ゲーム理論入門」が2008年4月8日に出版されました。 この本は、以下のような特徴を持っています。

  • 完備情報・不完備情報の戦略形・展開形ゲーム、および協力ゲームと、ゲーム理論の基本的な話題をすべて体系的に網羅した本格的なテキスト
  • 「図解雑学ゲーム理論」のノウハウを引継ぎ、図表や数値例を多用することで、難解な数式を用いずにゲーム理論が一通り習得できるようにな るに努めた
  • 抽象的な理論を導入するのではなく、コンビニ戦争や転職などの具体例を用いて「なぜそのような理論を構築するのか」という真意を分かりやすく解説し、抽象的な理論を学ぶモチベーションを明らかにした抽象的な理論にとどめずに、ゲーム理論の代表的な応用例である、寡占市場の分析・交渉・投票・オークション・モラルハザードと最適契約・ 逆選択・シグナリングなどについて解説した
  • 本書は、岩手県立大学(総合政策学部)・東京都立大学(経済学部)・首都大学東京(経営学部・ビジネススクール)・政策研究大学院大学・筑波大学(情報学類・ビジネススクール)・東京工業大学・中小企業大学校、など、筆者が長年に渡ってさまざまな分野の学生に講義した内容をまとめたものです。

「ゼミナールゲーム理論入門」資料

オンライン講義

東京都立大学におけるゲーム理論1とゲーム理論2のオンライン講義です。コロナ対応のためyoutubeにオンデマンドの講義として公開しました。テキストは、ゼミナールゲーム理論入門なので、本著書を学ぶためのオンライン講義になっています。