クールノー競争とベルトラン競争関連のページ

クールノー競争とベルトラン競争に関して来られる方が多いので、関連する資料をまとめておきます。

初歩から学ぶゲーム理論-web講義:関連ページ

オンライン講義

2020年東京都立大学「ゲーム理論1」オンライン講義(youtube):コロナ対応

講義資料(ゼミナールゲーム理論入門:第5章)

首都大学東京「ゲーム理論1」の講義資料から、テキストである「ゼミナールゲーム理論入門」の第5章講義する部分のスライドです。テキストの内容に沿っています。クールノー競争、ベルトラン競争、シュタッケルベルグ競争に相当する部分です。
数値例と演習になります。文字式による一般的な計算はORセミナーのスライドのほうがいいです。

講義資料(ORセミナー)

「技術者のためのゲーム理論の基礎(2)-初歩から学ぶクールノー競争とベルトラン競争」スライド

  • 2015年のORセミナーでの講演を修正したものです。理系の技術者を対象にクールノー競争やベルトラン競争を講義し、そこから経営戦略論や産業組織論を学ぶことにつなげようというねらいです。ORセミナー2014年「技術者のためのゲーム理論の基礎(1)」のゲーム理論入門はこちらにあります。

クールノー競争とベルトラン競争入門(4):図と最適反応関数で理解するクールノー競争

クールノー競争の価格・生産量と社会的総余剰では、2社のクールノー競争におけるクールノー均衡を求める方法を説明しました。ここではそれを「最適反応曲線」(反応曲線、最適反応関数)と呼ばれる図で説明し、ナッシュ均衡との関連をより明確にします。

モデルの設定(再掲)

クールノー競争の価格・生産量と社会的総余剰で説明した設定を再掲します。そこから読んでいる方は、ここは飛ばして構いません。

  • 同じ製品を販売している企業AとB。
  • AとBの生産量をそれぞれ\(x_A,x_B\)とする。
  • 市場全体の生産量を\(x=x_A+x_B\)とし、その価格\(p\)は$$p=a-bx$$で与えられるとする。
  • 製品1単位の費用(限界費用)はAもBも\(c\)で同じとする。
  • 企業Aの利益を\(\pi_A\)とおく。$$\pi_A=px_A-cx_A$$。
  • 企業Aの利益\(\pi_A\)を最大にする\(x_A\)を考える。\(p=a-bx\)を代入し、\(x=x_A+x_B\)に注意すると\[ \begin{align} \pi_A &=\{a-b(x_A+x_B)\}x_A-cx_A\\&=-bx_A^2-bx_Ax_B+(a-c)x_A \tag{1} \end{align}\]とる。
  • 式(1)を最大にする\(x_A\)を求めるため、\(x_A\)で微分して0になるところを求める。(1)を\(x_A\)で微分すると、\(-2bx_A-bx_B+(a-c)\)。したがって\[-2bx_A-bx_B+(a-c)=0\]を解けば良く、これより\[x_A=-\frac{1}{2}x_B+\frac{a-c}{2b} \tag{2}\]となる。
  • 企業Bの利益を\(\pi_B\)とおく。$$\pi_B=px_B-cx_B$$。
  • 企業Bの利益\(\pi_B\)を最大にする\(x_B\)を求めると、\[x_B=-\frac{1}{2}x_A+\frac{a-c}{2b} \tag{3}\]となる。
  • 式(2)と式(3)を、それぞれ「企業Aの最適反応関数」「企業Bの最適反応関数」と呼びます。
  • 式(2)は企業Bの生産量\(x_B)\が与えられたときに、企業Aの利益を最大にする企業Aの生産量を表しています。
  • 式(3)は企業Aの生産量\(x_A)\が与えられたときに、企業Bの利益を最大にする企業Bの生産量を表しています。

最適反応関数を図で書く-最適反応曲線

上記の最適反応関数を横軸に(x_A)、縦軸に(x_B)にした図(グラフ)に描いてみます。まず式(3)の企業Bの最適反応関数から考えてみます(⇒なぜなら、左辺は縦軸、右辺は横軸のグラフに慣れている人が多いからです)。式(3)のグラフを書いてみると、以下のようになります。

企業Bの最適反応曲線

この式は切片が\(\frac{a-c}{2}\}で、傾きが-1/2の右下がりの直線になります。これは企業Aの生産量が与えられると、そのとき企業Bの利益が最大になる生産量がいくつであるかを示す曲線になるわけです。企業Bは、もし企業Aの生産量が決まれば、自分がもっとも利益が高くなる生産量が分かるわけですが、企業Aの生産量は決まっていません。そこでこれに式(2)の企業Aの最適反応曲線を描き、重ねてみます。

 

企業Aと企業Bの最適反応曲線

企業Aは、企業Bと縦軸と横軸が逆になりますね。切片と傾きは同じです。企業Aは、もし企業Bの生産量が決まれば、自分の利益を最大にする生産量が分かるわけですが、企業Bの生産量は決まっていません。

企業Bの生産量が決まらないと企業Aの生産量が決まらず、企業Aの生産量が決まらないと企業Bの生産量が決まらない。そこで「お互いが最適反応となる生産量の組」を選び合うことが答となると考えます。これがナッシュ均衡、またはクールノー均衡(またはクールノー=ナッシュ均衡)と呼ばれるものです。

ナッシュ均衡は20世紀半ばにゲーム理論で考えられたものですが、寡占市場の分析に限ると、それより100年以上も前にクールノーが上記の解を考えていたことによるため、このように呼ばれます。

お互いが最適反応となる生産量の組は、両方の直線が交わった点です(次の図)。この点は、式(2)と式(3)の連立方程式を解くことによって求められます。これを求めると、\[x_A=x_B=\frac{a-c}{3}\]となります。

 

クールノー均衡

以下も参考にして下さい。

ナッシュ均衡の求め方:2人ゲームの利得行列の場合

ここではゲーム理論におけるナッシュ均衡を求める方法について。「プレイヤーが2人で混合戦略(確率を用いる戦略)を考えない場合」について説明します。ゲーム理論の基本中の基本と言えます。

  • 混合戦略(確率を用いる戦略)のナッシュ均衡の求め方こちら
  • クールノー均衡の求め方はこちら
  • ナッシュ均衡とは何かはこちら
  • ナッシュ均衡の概念を理解するおけいこはこちら

ナッシュ均衡の求め方

ナッシュ均衡は「すべてのプレイヤーが最適反応戦略(利得が最も高くなる戦略)を選び合う戦略の組み合わせ」ですから、以下の方法で求めることができます。

  • STEP1 プレイヤー1の立場で考える。
    • 相手(プレイヤー2)のすべての戦略に対して、プレイヤー1がもっとも利得が高くなる戦略をチェックする(プレイヤー1の最適反応戦略)。ここでは利得に下線を引く。
  • STEP2 プレイヤー1の立場でチェックが終わったら、プレイヤー2の立場で考える。
    • 相手(プレイヤー1)のすべての戦略に対して、プレイヤー2がもっとも利得が高くなる戦略をチェックする(プレイヤー2の最適反応戦略)。ここでは利得に下線を引く。
  • STEP3 すべてのチェックが終わったら、両プレイヤーの利得に下線が引かれているのがナッシュ均衡。(利得ではなく、戦略の組であることに注意!)

例題

以下の利得行列でナッシュ均衡を求めてみましょう。

ナッシュ均衡を求めてみよう

今回は、ナッシュ均衡を求める手順を習得することが目的なので、ストーリーは特につけずに、単なる記号で利得行列を考えます。利得行列の読み方が不安、分からないって方は、こちらをご覧ください。

STEP1 まず、プレイヤー1の立場で考えます。相手(プレイヤー2)のすべての戦略に対して、プレイヤー1がもっとも利得が高くなる戦略(最適反応戦略)をチェックし、利得の下に下線を引いて行きます。

1.1 プレイヤー2がLという戦略を選んだ場合を考えます。プレイヤー1はTを選べば利得3、Bを選べば利得2です。したがってプレイヤー1はTを選びます(TがLに対する最適反応戦略)。そこでTを選んだ時の利得3に下線を引きます。

プレイヤー2のLに対するプレイヤー1の最適反応戦略はT

1.2 プレイヤー2がMという戦略を選んだら?プレイヤー1はTを選べば利得0、Bを選べば利得1です。したがってプレイヤー1はBを選びます(BがMに対する最適反応戦略)。そこでBの利得1に下線を引きます。

プレイヤー2のMに対するプレイヤー1の最適反応戦略はB

1.3 最後にプレイヤー2がRという戦略を選んだ場合を考えます。プレイヤー1はTを選んでも、Bを選んでも利得は2で同じです。この場合はTとBの利得2の両方に下線を引きます( TもBもRに対する最適反応戦略)。

プレイヤー2のRに対するプレイヤー1の最適反応戦略はTとB

STEP2 プレイヤー1に対する検討が終わったので、次にプレイヤー2の立場で考えます。相手(プレイヤー1)のすべての戦略に対して、プレイヤー2の利得がもっとも高くなる戦略(最適反応戦略)をチェックし、利得に下線を引いて行きます。

2.1 プレイヤー1がTという戦略を選んだ場合を考えます。プレイヤー2はLを選べば利得4、Mを選べば利得2、Rを選べば利得0です。したがってプレイヤー2はLを選びます(LがTに対する最適反応戦略)。そこでLの利得4に下線を引きます。

プレイヤー1のTに対するプレイヤー2の最適反応戦略はL

2.2 最後にプレイヤー1がBという戦略を選んだ場合を考えます。プレイヤー2はLを選べば利得2、Mを選べば利得3、Rを選べば利得9です。したがってプレイヤー2はRを選びます(RがBに対する最適反応戦略)。そこでRの利得9の下に線を引きます。

プレイヤー1のBに対するプレイヤー2の最適反応戦略はR

STEP3これでプレイヤー1とプレイヤー2のすべてのチェックが終わりました。プレイヤーの両方の利得に下線が引かれている戦略の組がナッシュ均衡です!「

ナッシュ均衡は(T,L)と(B,R)

ナッシュ均衡は「プレイヤー1はTを選び、プレイヤー2はLを選ぶ」「プレイヤー1はBを選び、プレイヤー2はRを選ぶ」の2つです。このようにナッシュ均衡は複数出てくる場合があります(これが悩みの種)。これを(T,L)と(B,R)のように、ベクトルのように書く場合もあります。

ナッシュ均衡は「戦略の組 (profile of strategies)」なので、戦略の組として答えます。「ナッシュ均衡は(3,4)と(2,9)です」などと答えては間違いです。それは利得の組ですから。「Tがナッシュ均衡」などと答えても間違いです。Tはプレイヤー1の戦略(a strategy of player 1)です。戦略の組み合わせではありません。

東京都立大学 2020ゲーム理論1 オンライン講義(2020:コロナ対応)

クールノー競争とベルトラン競争入門(3):クールノー競争の価格・生産量と社会的総余剰

独占市場における価格と生産量の決定を理解したとして、ここでは2社のクールノー競争の価格と生産量の決定、および社会的総余剰の計算について説明します。

クールノー競争の価格と生産量の決定:モデル

ここでは同質財を販売している2社の生産量競争を考えます。一般にクールノー競争と呼ばれるのは、このモデルです(不完全競争市場の分類)。

  • 企業AとBが同じ製品(同質財)を販売するとします。AとBの生産量をそれぞれ\(x_A,x_B\)とし、AとBは\(x_A,x_B\)を決定するとしましょう。
  • 市場全体の生産量を\(x=x_A+x_B\)に対して、その価格\(p\)は$$p=a-bx$$で与えられるとします。
  • ここで製品を1単位の費用(限界費用)はAもBも\(c\)で同じであり、生産量にかかわらず一定とします。簡単にするため固定費は考えません。
  • AとBは利益を最大にすると考えます。AとBは、生産量\(x_A、x_B\)をいくらにするでしょうか。

問題の解法

問題は以下のようにして解くことができます。

  • 企業Aの利益を\(\pi_A\)とおく。ここで(利益)=(収入)-(費用)であり、収入は(価格)\(\times\)(生産量)、費用は(限界費用)\(\times\)(生産量)となります。したがって$$\pi_A=px_A-cx_A$$となります。
  • この\(\pi_A\)を最大にする\(x_A\)を考えます。そこで\(p=a-bx\)を代入し、さらに\(x=x_A+x_B\)に注意すると\[ \begin{align} \pi_A &= px_A-cx_A \\ &=(a-bx)x_A-cx_A \\&=
    \{a-b(x_A+x_B)\}x_A-cx_A\\&=-bx_A^2-bx_Ax_B+(a-c)x_A \tag{1} \end{align}\]となります。
  • この式(1)を最大にする\(x_A\)を求めるには、ざっくり言うと\(x_A\)で微分
    (正確には偏微分)して0になるところを求めれば良い。(1)を\(x_A\)で微分すると、\(-2bx_A-bx_B+(a-c)\)となります。したがって\[-2bx_A-bx_B+(a-c)=0\]を解けば良く、これより\[x_A=-\frac{1}{2}x_B+\frac{a-c}{2b} \tag{2}\]となります。
  • 式(2)は、企業Aの最適反応関数と呼ばれます。式(2)は\(x_B\)が与えられたときに企業Aの利益を最大にする企業Aの生産量を表しています。したがって、企業Bの生産量が決まれば、企業Aとの最適な生産量(答)が決まるのですが、企業Bの生産量がいくらになるか分かりません。そこで企業Bが利益を最大にする生産量を同様に求めてみます。
  • 企業Bの利益を\(\pi_B\)とおきます。$$\pi_B=px_B-cx_B$$であり、企業Aの場合と同様に\(p=a-bx\)を代入して計算し、$$\pi_B=-bx_B^2-bx_Ax_B+(a-c)x_B$$を得ます。さらに\(x_B\)で微分して0になるところを求めると、\[x_B=-\frac{1}{2}x_A+\frac{a-c}{2b} \tag{3}\]となります。
  • この式(3)は、企業Bの最適反応関数と呼ばれます。企業Aと同様に\(x_A\)が与えられたときに、企業Bの利益を最大にする企業Bの生産量を表しています。
  • ここで、企業Aは企業Bの生産量が分からなければ、利益を最大にする生産量が分からず、企業Bは企業Aの生産量が分からなければ、利益を最大にする生産量が分かりません。ここでゲーム理論のナッシュ均衡の概念により解を求めるわけです。ナッシュ均衡は、お互いが最適反応戦略を選び合うような戦略の組み合わせで、ここでは式(2)と式(3)を同時に満たす\(x_A\)、\(x_B\)となります。
  • 式(2)と式(3)を同時に満たす\(x_A\)、\(x_B\)は、これらを連立方程式で解くことによって求められます。式(3)の\(x_B\)を式(2)に代入して計算すると\(x_A=-\frac{1}{4}x_A+\frac{a-c}{4b}\)となり、これから\(x_A=\frac{a-c}{3b}\)を得ます。またこれを式(2)に代入して、\(x_B=\frac{a-c}{3b}\)を得ます。
    このときの価格は\[p=a-bx=a-b(x_A+x_B)=\frac{a+2c}{3} \]となります。
  • このとき企業Aの利益は\[ \begin{align} \pi_A &= px_A-cx_A =(p-c)x_A\\ &=\left(\frac{a+2c}{3}-c\right)\left(\frac{a-c}{3b}\right)=\frac{(a-c)^2}{9b} \end{align}\] となります。同様に企業Bの利益も同じになります。

まとめますと、クールノー競争における企業Aと企業Bの生産量は\(x_A=x_B=\frac{a-c}{3b}\)となります。これをクールノー均衡と呼びます。クールノー均衡における価格は\(p=\frac{a+2c}{3}\)、各企業の利益は\(\pi_A=\pi_B=\frac{(a-c)^2}{9b}\)となります。

消費者余剰、社会的総余剰

独占市場における、消費者余剰、生産者余剰、社会的総余剰について示します。

市場全体の取引量が\(x=x_A+x_B=\frac{2(a-c)}{3b}\)であることに注意すると、上記で求めたクールノー競争の価格と生産量と企業の限界費用は、以下の図で示すことができます。

クールノー競争における生産量・価格・社会的総余剰

消費者余剰は、図の青色で示された部分の三角形です。

三角形の底辺の長さは\(\frac{2(a-c)}{3b}\)、高さは\[ a-\frac{a+2c}{3}=\frac{2(a-c)}{3} \]ですから、三角形の面積は\[ \frac{1}{2} \times\frac{2(a-c)}{3b} \times \frac{2(a-c)}{3}=\frac{2(a-c)^2}{9b} \]となります。

企業の利益は、図の緑色の部分の長方形の面積です。

長方形の高さ(価格-限界費用)は、\(\frac{a+2c}{3}-c=\frac{a-c}{3}\)、ヨコの長さは\(\frac{2(a-c)}{3b}\)ですので、長方形の面積は\[\frac{a-c}{3}\times\frac{2(a-c)}{3b}=\frac{2(a-c)^2}{9b}\]となります。先に求めた企業の利益を合計した値(\(\pi_A+\pi_B\))と一致することがわかりますね。これを生産者余剰とも呼びます。

社会的総余剰は、消費者余剰と生産者余剰の総和です。したがって社会的総余剰は
\[\frac{2(a-c)^2}{9b}+\frac{2(a-c)^2}{9b}=\frac{4(a-c)^2}{9b}\]です。

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クールノー競争とベルトラン競争入門(2):独占市場の価格・生産量と社会的総余剰

クールノー競争は、2社以上の企業が利益を最大化するように生産量を決める生産量競争です。その考え方の基本となるのは、企業が1社のときの独占市場の生産量決定です。1社のときが分からないで、2社以上の場合が分かることがあろうか。いやない。(反語)。ここでは独占市場において、生産量と価格がどのように決定されるかを示します。

独占市場の価格と生産量の決定:モデル

ここでは以下の例を考えます。

  • 企業Aがある製品を独占的に販売しているとし、その生産量\(x\)を決定するとしましょう。
  • 生産量\(x\)に対して、その価格\(p\)は$$p=a-bx$$で与えられるとします。
    • ここでは生産量=需要量(取引量)となるように価格が決定されるとします。すなわち在庫は考えず、すべての生産量が売り切るように価格がつくと考えます。
    • したがって、たくさん生産すると取引量は多いのですが、価格が下がり、儲かりません。価格を高くしようとすると少なく生産しなければならず、その生産量が少なすぎても儲かりません。すなわち、価格と生産量の間にトレードオフがあり、そのもとで、企業Aは生産量\(x\)を決定する問題を考えます。
    • なお「価格が\(p\)のとき、需要を\(x\)とすると、\(x=\alpha – \beta p\)となる」のように、需要関数が与えられる場合もあります。その場合は、 生産量=需要量(販売量)となることから、\(x\)を生産量と考えて、\(p=(\alpha/\beta)-(1/\beta)x\)のように\(p\)の式に変換すれば良いわけです。\(a=\alpha/\beta\)、\(1/\beta\)とおくと、上記の設定になります。
  • ここで製品を1単位売る費用(限界費用)は\(c\)とし一定とします。簡単にするため固定費は考えません。
  • 企業Aとは利益を最大にするように、この製品の生産量\(x\)を決定するとします。\(x\)はいくらになるでしょうか。

問題の解法

問題は以下のようにして解くことができます。

  • 企業Aの利益を\(\pi\)とおく。ここで(利益)=(収入)-(費用)であり、収入は(価格)\(\times\)(生産量)、費用は(限界費用)\(\times\)(生産量)となります。したがって$$\pi=px-cx$$となります。
  • この\(\pi\)を最大にする\(x\)を求めれば良いわけです。そこで \(p=a-bx\) を代入して\(x\)だけの式にすると\[ \begin{align} \pi &= px-cx \\ &=(a-bx)x-cx \\&=-bx^2+(a-c)x \end{align}\]となります。
  • この式を最大にする\(x\)を求めるには、ざっくり言うと\(x\)で微分して0になるところを求めれば良い。\(-bx^2+(a-c)x\)を \(x\)で微分すると、\(-2bx+(a-c)\)となります。したがって\[ -2bx+(a-c)=0 \]を解けば良く、これより\(x=\frac{a-c}{2b}\)が求める生産量(最適生産量)となります。
  • このときの価格は、\(p=a-bx^*=\frac{a+c}{2}\)となります。
  • このとき企業の利益は\[ \begin{align} \pi &= px-cx =(p-c)x \\ &=(
    \frac{a+c}{2}-c)(\frac{a-c}{2b})=\frac{(a-c)^2}{4b} \end{align}\] となります。

消費者余剰、社会的総余剰

独占市場における、消費者余剰、生産者余剰、社会的総余剰について示します。

上記で求めた独占市場の価格と生産量と企業の限界費用は、以下の図で示すことができます。

独占市場における消費者余剰・生産者余剰

消費者余剰は、図の青色で示された部分の三角形です。

(なぜこの部分が消費者余剰になるかは、ミクロ経済学のテキストなどを参照してください。なお拙著「ゼミナールゲーム理論入門」の5章にも、独占やクールノー競争での消費者余剰や社会的総余剰の数値例による初歩的な解説があります)。

三角形の底辺の長さは\(\frac{a-c}{2b}\)、高さは\[ a-\frac{a+c}{2}=\frac{a-c}{2} \]ですから、三角形の面積は\[ \frac{1}{2} \times\frac{a-c}{2b} \times \frac{a-c}{2}=\frac{(a-c)^2}{8b} \]となります。

企業の利益は、図の緑色の部分の長方形の面積です。

なぜかと言うと、製品1単位の利益は長方形の高さ(価格-限界費用)になり、これに長方形のヨコの長さ(取引量)をかけたものが利益となるからです。なお

長方形の高さ(価格-限界費用)は、\(\frac{a+c}{2}-c=\frac{a-c}{2}\)、ヨコの長さは\(\frac{a-c}{2b}\)ですので、長方形の面積は\[\frac{a-c}{2}\times\frac{a-c}{2}=\frac{(a-c)^2}{4b}\]となります。先に求めた値と一致しますね。これを企業の生産者余剰とも呼びます。

社会的総余剰は、消費者余剰と生産者余剰の総和です。したがって社会的総余剰は
\[\frac{(a-c)^2}{8b}+\frac{(a-c)^2}{4b}=\frac{3(a-c)^2}{8b}\]です。

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Surface Pro LTE が携帯電話ネットワークに接続しない

SIMカードをsurface pro LTEに挿入して、ネットワークに接続しようと試みたが、うまく行かなかった。かなり苦労して、うまく行ったので、ここに記しておきます。

症状

b-mobileから12ヶ月有効のSIMカード(bmobile 7GBプリペイドSIM)を購入。開通の手続き後にsurface pro LTEに挿入して、ネットワークに接続しようと試みたが、うまく行かなかった。

  • 設定>ネットワークとインターネット>携帯電話の画面へ行くと、NTT DOCOMO(HSDPA)という文字は出ているが、「切断済み」となったままでネットに接続されない。
  • うまく行かなかったSIMカードを別のタブレットに差したところ問題なく動いた(SIMカードに問題はない)
  • 詳細オプションでAPNを設定する。間違ってはいないように思える。
    • APN: bmobile.ne.jp
    • ユーザー名: bmobile@4g
    • パスワード: bmobile

記事を検索

ネットで検索し、同様の症状で困っている記事を多く発見、いろいろ試してみる。

うまくいく可能性の高い記事

いろいろ探しているうちに、可能性の高い記事を見つける。それは「APNの種類ーインターネットおよびアタッチ」を選択しなければならない、というもの。

2021/12/16 追記 新しいSIMで同様の症状になったのだが、このときもインターネットおよびアタッチの選択により解決。このときは再起動は不要だった。

「これではないか?」と思ったものの、「APNの種類」という項目が見当たらない。でもこれは何か見たことがあるぞ、どこかにあったような…さらに調べてみると

「APNの種類」を一度誤って設定して保存した場合は、「追加したAPNをすべて削除した上で、あらためて「APNを追加します」をクリックし、APNの再設定を行う必要がある

ということ。

これでうまくいくと確信し実行したが、うまく行かない!?

自分の経験上、こういうときは再起動が必要だと思い、やってみるとその通り。うまく接続できました。

まとめ

まとめてみると、以下のようになる。

Surface Pro LTE が携帯電話ネットワークに接続しないとき。

  • まず現在のAPN設定を全部削除する。念のため、ここで再起動しておいたほうが良い。
  • 新規にAPNを追加し、APNのプロファイル(プロファイル名は何でも良い。 APN名、 ユーザー名、パスワード)を誤りなく設定する。
  • 認証タイプ: CHAP、IPの種類:Ipv4 にする。
  • APNの種類:「インターネットおよびアタッチ」を選択
  • このプロファイルを適用するにチェックマークを入れて保存し、左上の矢印←で1つ前の画面に戻る。
  • ここで再起動する。
    • 2021/12/16追記 このときは再起動は不要ですぐ繋がった。

うまくいくと、設定>ネットワークとインターネット>携帯電話の画面で
NTT DOCOMO(HSDPA) 切断済み
となっていた表示が
NTT DOCOMO(LTE) 接続済み
に変わります。

またこの画面で詳細オプションをクリックし「インターネットAPN」を見ると、接続できていなかった時は「適用済み」としかなっていなかった表示が、「アクティブ化済み」に変わっています。

2021/12/16 追記 このときは、「インターネットAPN」と「APNを添付する」の2つに新しい設定が作られて、インターネットAPNは「ライセンス認証済み」、APNを添付するでは「適用済み」という表示になっていた。