2016年渡辺ゼミ同窓会

2016年渡辺ゼミ(首都大経営学系・都立大経済学部)同窓会

日時:11月19日(土)   首都大南大沢キャンパス
15時-16時      学部生就職祭  (首都大3号館経営学系会議室)
16時-17時00分  卒業生と学部生の交流会 (首都大3号館経営学系会議室)
(17時-17時30分 パーティ準備)
17時30分-19時30分  同窓会パーティ--ルヴェソンベール南大沢
20時-       同窓会2次会 場所は南大沢か多摩センター

メインとなる同窓会のパーティは,首都大学東京内のルヴェソンベール南大沢で行います.

パーティの参加費は,11月3日(木)までに申し込むと6500円,それ以降は7500円となります.
パーティの開始時間は17時30分に変更になりました.受付は17時から開始予定です.

就職祭は,学部生を中心に行われます.興味があればご参加下さい.
そのあと16時から同窓生と卒業生の交流会を行う予定です.卒業生の皆さんに社会人生活について,学生から質問に答えてもらったりする予定です.
お時間のある方はぜひ来て下さい.出欠は当日に変更されても構いません.

2次会の場所は未定ですが,近くの居酒屋を予定しています.会費は未定です.

出欠は「調整さん」というアプリで行います.以下のURLに出欠を書き込んで下さい.
「名前」は「卒業年+ニックネーム」で結構です.
同年代のゼミ生が分かれば良いです.「09こうさか」とか「10たかみ」とかそんな感じで良いです.必ず頭に卒業年を入れて下さい.何か問題があれば私までメールを下さい.

https://chouseisan.com/s?h=c5db880c65db4119a91c038b4901a31f

図解雑学ゲーム理論

ナツメ社の人気シリーズ図解雑学から,私の著書「図解雑学ゲーム理論」が2004年8月14日に出版されました.

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kindle版もあります.

この本は次のようなことを目指しました.

  • 学生やビジネスマンが,電車の中ですらすら読めること
  • 単なる「雑学」ではなく,ゲーム理論の初歩を学べる「テキスト」であること
  • 読み物で終わることなく,ビジネスや日常生活で使えるゲーム理論的技法を身につけられること
  • 具体的には,自分が抱える問題を「利得行列」や「ゲームの木」に表現し,答えを求めることができるようになること
  • 難解な数式は用いない
  • 一般化はせず,具体的なストーリーと数値で例示する
  • コミットメント,モラルハザード,インセンティブ,交渉,オークションなどのキーワードをゲーム理論で理解できるようになる

このような事が可能になったのは,図解雑学シリーズが持つ「絵で見て理解する」という形式によるものです.ゲーム理論は本来,数学をベースにしているので,それまでのゲーム理論の本は,テキストであることを諦めて概略を解説する「読み物」として終わるか,または数式によってテキストの形式を取るかを選択せざるをえませんでした.数式で説明するよりも,図や絵を用いることで,理解は飛躍的に高めることができます.

幸いなことに,「図解雑学ゲーム理論」は皆様に愛されて,2010年末で18刷となりました.
これからも「図解雑学ゲーム理論」でゲーム理論に対する理解を深め,ゲーム理論を楽しんでいただければと思います.

ゼミナールゲーム理論入門 読者からの質問と回答

読者からの質問のうち,誤植に関してはゼミナールゲーム理論入門正誤表-第8刷まで(pdfファイル)に,演習問題に関する質問は演習問題の解説に載せています.

ここではそれ以外のものに対して載せています.

第6章 6.4.2について

6.4.2マキシミニ戦略とミニマックス値を求める というところでわからなくなってしまいました. マキシミニ戦略の求め方の1つ目2つ目は何とかわかるのですが3つ目がわかりません.

  • 質問1:「図6.24のグラフより最悪の利得を与えるプレイヤー2の(純粋)戦略は,X2とY2の両方である(p211)」→最悪の利得とはなん ですか?
  • 質問2:グラフの交点の場所だとしたらそこがなぜ最悪なのですか?「プレイヤー2の期待利得は,プレイヤー1がX1を選んでもY1を選んでも等しいはずである.(p211~212)」→なぜですか?

質問1の回答:

  • 最悪の利得とは,最小の利得のことです.図6.23と図6.24には,プレイヤー2がx2を選んだときとy2を選んだときの プレイヤー1の期待利得が分かります.これを見ると…
    • 0≦x<3/4では,プレイヤー2がx2を選ぶときがプレイヤー1にとって利得は最小 (最悪)となる.
    • 3/4<x≦1では,プレイヤー2がy2を選ぶときがプレイヤー1にとって利得は最小 (最悪)となる.
    • そして, x=3/4では,プレイヤー2がx2を選ぶときとy2を選ぶときの両方が,プレイヤー1 にとって利得は最小(最悪)となる.
    • したがって「プレイヤー1のマキシミニ戦略x=3/4」に対して,利得を最小に する戦略はx2とy2の両方である

    ということになります.

  • このようにプレイヤー2の戦略が2つだと,プレイヤー1 のマキシミニ戦略x=3/4に対して最小(最悪)の利得を与える戦略が「すべての」 戦略であり,言っている意味が分かりにくいのですが,プレイヤー2の戦略が3つ あると意味が分かってきます.P212のプレイヤー2の戦略が3つの場合を見 てみましょう.
    • 0≦x<1/3では,プレイヤー2がy2を選ぶときがプレイヤー1にとって利得は最小 (最悪)となる.
    • x=1/3では,プレイヤー2がx2を選ぶときとy2を選ぶときの両方が,プレイヤー1 にとって利得は最小(最悪)となる.(z2では最悪にはならない)
    • 1/3<x<2/3では,プレイヤー2がx2を選ぶときがプレイヤー1にとって利得は最小 (最悪)となる.
    • x=2/3では,プレイヤー2がx2を選ぶときとz2を選ぶときの両方が,プレイヤー1 にとって利得は最小(最悪)となる.(y2では最悪にはならない)
    • 2/3<x≦1では,プレイヤー2がz2を選ぶときがプレイヤー1にとって利得は最小
      (最悪)となる.
  • したがって「プレイヤー1のマキシミニ戦略x=2/3」に対して,利得を最小にする戦略はx2とz2の両方です.(y2ではない),とな ります.このように マキシミニ戦略に対して,相手のどの戦略が利得を最悪にするかは相手の戦略 が3つ以上あるときに重要になります.
  • なお「最小」ではなく「最悪」と言っている理由は,ゼロ和ゲームでプレイヤー 1の利得表だけを使った場合,プレイヤー1では利得を最小にすることが最悪です が,プレイヤー2は(プレイヤー1の利得を)最大にすることが最悪で,「最小」 と言ってしまうと,同じ原理をプレイヤー2にとって当てはめたときに分からなく なってしまうからです.

質問2の回答:

  • .ミニマックス定理では「プレイヤー2のマキニミニ戦略に対して最悪の利得を 与える戦略は,プレイヤー1のマキシミニ戦略」だということが分かります. またプレイヤー1のマキシミニ戦略はp=3/4であることが既に求められています.
  • .もしプレイヤー2のマキニミニ戦略における期待利得が,x1よりy1の方が大き いと,プレイヤー2のマキシミニ戦略に対して最悪の利得を与える戦略はx1に なります.したがってミニマックス定理より,プレイヤー1のマキシミニ戦略
    はx1(p=1)となり,p=3/4であることに矛盾します.
  • 同様にプレイヤー2のマキニミニ戦略における期待利得が,y1よりx1の方が大 きいと,プレイヤー2のマキシミニ戦略に対して最悪の利得を与える戦略はy1に なります.したがってプレイヤー1のマキシミニ戦略はy1(p=0)となり,p=3/4
    であることに矛盾します.
  • したがってプレイヤー2のマキニミニ戦略における期待利得は,x1とy1で
    等しくなければなりません.
  • だいたいは上記の通りですが,実は2についてはもう少し詳しい説明が必要 カも知れません.プレイヤー1の混合戦略をx1をp,y1を1-pで選ぶようなもの として考えると,このような戦略に対するプレイヤー2の期待利得は
    p×(x1での期待利得)+(1-p)×(y1での期待利得)
    になります.もしプレイヤー2のマキニミニ戦略における期待利得が,x1より y1の方が大きいと,プレイヤー2のマキシミニ戦略に対して最悪の利得を与え る戦略はp=1になります.p=3/4での期待利得は,p=1よりも大きくなります.
    これは,p=3/4がプレイヤー1のマキシミニ戦略であることに矛盾します.

ゼミナール ゲーム理論入門

ゼミナールゲーム理論 紹介

日本経済新聞社から「ゼミナールゲーム理論入門」が2008年4月8日に出版されました. この本は,以下のような特徴を持っています.

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  • 完備情報・不完備情報の戦略形・展開形ゲーム,および協力ゲームと,ゲーム理論の基本的な話題をすべて体系的に網羅した本格的なテキスト
  • 「図解雑学ゲーム理論」のノウハウを引継ぎ,図表や数値例を多用することで,難解な数式を用いずにゲーム理論が一通り習得できるようにな るに努めた
  • 抽象的な理論を導入するのではなく,コンビニ戦争や転職などの具体例を用いて「なぜそのような理論を構築するのか」という真意を分かりやすく解説し,抽象的な理論を学ぶモチベーションを明らかにした抽象的な理論にとどめずに,ゲーム理論の代表的な応用例である,寡占市場の分析・交渉・投票・オークション・モラルハザードと最適契約・ 逆選択・シグナリングなどについて解説した

本書は,岩手県立大学(総合政策学部)・東京都立大学(経済学部)・首都大学東京(経営学部・ビジネススクール)・政策研究大学院大学・筑波大 学(情報学類・ビジネススクール)・東京工業大学・中小企業大学校,など,筆者が長年に渡ってさまざまな分野の学生に講義した内容をまとめたものです.

訂正情報と正誤表

初版には誤りが多くあり,ご迷惑をおかけしています.以下の正誤表をご利用下さい.

第12章に示されている仁の求め方には問題があり,これでは正しく仁が求められないことがあることが分かりました.仁の求め方についての補足を作りましたので,参考にして下さい.

学習のための教材

首都大学東京の学部講義「ゲーム理論I」「ゲーム理論II」,学部生のゼミ(経営学演習),首都大学東京ビジネススクールでの講義に「ゼミナールゲーム理論入門」が使われています.この講義のために作られたスライド・演習問題解答の詳説・追加演習問題とその解答などを公開しています.学習のための補助教材としてお使いください.

ジャンケンの必勝法と行動ファイナンス・行動経済学

ジャンケンの必勝法とナッシュ均衡

じゃんけんの必勝法はゲーム理論のナッシュ均衡を考えるために良い教材になります.
2人でジャンケンをするとき,ゲーム理論の解は「グー・チョキ・パーをすべて1/3で出す」ということの組合せで,それ以外はない.

「グー・チョキ・パーをすべて1/3で出す」と言う事以外に,ジャンケンの必勝法があったならば?例えば,多くの人は「グーを多く出し,チョキをあまり出さない」と言う実験結果が知られている(巷で言われるジャンケンの必勝法については,こちら).したがって「初心者にはパーを出せ」と言うのが必勝法の1つとされている.また,2回続けて同じ手を出すと,次は異なる手を出すことが多く,したがって「2回続けてアイコになったら,それに負ける手を出せ」というのも必勝法の1つとされている.

しかし「初心者にはパーを出せ」という必勝法を知って使う人には,チョキを出すと勝つことができる.また「2回続けてアイコになったら,それに負ける手を出せ」という人には2回続けてアイコになったら,3回目も同じ手を出すと勝つことができる.

このように「グー・チョキ・パーをすべて1/3で出す」以外のあらゆる「ジャンケンの必勝法」は,それを使うことが知られてしまうと,もう必勝法にはならないのである.

ゲーム理論の解であるナッシュ均衡とは「自分以外がナッシュ均衡の戦略を選んでいる状態では,自分はナッシュ均衡以外の戦略を選んでも利得が高くならない」という状態だ.ゲーム理論では,ナッシュ均衡をゲームの結果として予測する.もしゲームを実際に行うプレイヤーがその予測を知ったとしても,彼はそこからナッシュ均衡以外の戦略に変えたいと思う動機を持たない(これをナッシュ均衡の自己拘束性と呼ばれる).

逆に,ナッシュ均衡以外の予測がなされると,誰かはそこから選択を変えることで利得が高くなる.したがって,その予測は当たらないはずだ.

以上のような理由から,じゃんけんやゲームの必勝法というものが仮に存在していたならば,少なくとも相手がそれを知らない」ということが条件になる(「理屈は知っているが実現できない」という場合もあるかもしれない).少なくとも,ここでインターネットや本として公刊されているようなものが,有益な必勝法となることはないはずである.

ジャンケンの必勝法と行動ファイナンス・行動経済学

このようなジャンケンの必勝法について考察することは,行動ファイナンスや行動経済学に対して私達がどのように接するべきかを考える手がかりになる.行動ファイナンスや行動経済学では,理論から乖離した人間の行動や現象が観察されることがあります.行動ファイナンスや行動経済学と言っても,その立場には以下のようにいくつかのものがあるように思えます.
(1)人間の行動が,自己の獲得する金銭を最大にするのではなく,別に目的があることを明らかにする.この立場では個人は効用を最大にする合理的な人間と解釈している.例えばファイナンスでは「ファンドマネージャーは,運用益を最大にしようとするのではなく,他者の運用益の平均を下回らないように行動する」「最後通牒ゲームでは自己の獲得利益を最大にするだけではなく,他者と公平であることも望み,それとのバランスで効用が決まる」など.
(2)人間の思考や認知には限界があったり,感情が理性的な判断を邪魔することで本人が目的としていることと異なる選択をすることがある.この立場では,個人は効用を最大にできない非合理的な人間と解釈している.

上記の立場から,さまざまな必勝法を考察してみよう.

(1)の立場で発見された必勝法は,それが皆に知られても必勝法として残る可能性があるだろう.ジャンケンに当てはめると,例えば「私はチョキを愛してやまない」という人がいたとして(そんな人はいないけど…),彼に対する「グーで勝つ」という必勝法は,たとえ彼がそれを知っても残る可能性がある,ということだ.この場合,彼は勝つことより,チョキを出して負けたことを喜んでいれば,それで勝った方も負けた方も自分の目的に従って合理的な選択をしたことになる.

これに対して(2)の立場で発見された必勝法-「初心者にはパーを出せ」「2回続けてアイコになったら,それに負ける手を出せ」と言った類のもの-は,それが皆に知られてしまったときに,なくなってしまうように思える.ただし,人間の思考や認知に限界があるので「分かっていてもできない,だからこのような必勝法は使える」というのは1つの考え方だ.これは「人間は,自分で乱数を作ることが難しい」などの認知科学の研究成果と合致する考え方である.

行動ファイナンスの研究に興味を持つものの中には,このような人間の非合理的な行動パターンを利用し,超過利益を得ようと考える者もいる.果たして彼らは,上記のことについて,どのようにどのくらい考えているのだろうか.非合理的な人間行動の判断ミスやアノマリは「何らかの理由でなくならない」と考えるのか,それとも全員にそれが知られていくまでの時間の間に利益をあげようと考えるのか.そのあたりについて,考えられているのだろうか.今後,これについてはいろいろ探っていきたいと考えている.

巷で言われるジャンケンの必勝法

ジャンケンの必勝法は理論的には存在しないはずですが(じゃんけんとゲーム理論・行動ファイナンス),巷ではいろいろとジャンケンの必勝法について言われていることがあります.ここでは,カナダジャンケン協会の必勝法について,紹介します.(How to beat anyone at Rock Paper Scissorsから)

基本的な考え方:相手の手の可能性が1つ減らせれば,その手に負ける手を出すと勝つ可能性が上がると考えよ.例えば,相手がグーを出す可能性が減れば,チョキを出せばアイコか勝つ可能性が高まり,負ける可能性は減るはずと考える.これをよく覚えておこう.

1.初心者にはパーを出せ
いろいろな人にジャンケンをさせてみてサンプルを集めてみると,グーがもっとも出やすく,チョキがもっとも出にくいそうです.これはカナダだけではなく,日本でも同じ研究結果があります(芳沢光雄 桜美林大学教授,読売オンラインの記事から).このことから,ジャンケンについて何も知らない初心者は,グーを出す傾向にあるので,パーを出すと勝てる,というものです.

2.中級者には最初にチョキを出せ
上記の設定に沿って考え,中級者はパーを出す.「ならばチョキを」という考え方だ.

3.2回同じ手が出たら,それに負ける手を
よく言われることに「アイコになったら,人はそれと異なる手を出す傾向にある.だからそれに負ける手を出せ」と言われる.例えば,グーでアイコになったら,人はそれと異なる手(パー・チョキ)を出す可能性が高まるので,チョキを出せ,というわけである.「基本的な考え方」にのっとった考え方だ.ところが中級者では,それも考慮しているので,なかなかそうは行かないかもしれない.しかし「2回同じ手が続く(double run)」と,さすがに人は異なる手を出したがるようで,異なる手が出る可能性がぐっと上がるはずである.したがって「2回同じ手が出たら,それに負ける手を」という考え方が出てくる.

4.宣言した手をその通りに出せ
相手に「パーを出します」と宣言する.相手は「そうすれば自分がチョキを出すと読んで,相手はグーを出してくるな」と読んでパーを出す.もしくはそれをさらに読んで,グーを出す.少なくとも相手はチョキを出す可能性は減るので「基本的な考え方」に沿ってグーを出すと良い.

5.相手に勝ったら,次はその手に負ける手を出せ
相手がチョキを出し,それに勝ったら,次はそれに負ける手であるパーを出せ.人は,ある手で負けると,次は焦ってその負けた手に勝つ手を出す傾向にある.

6.手を刷り込め
ルールを説明しながら,チョキを何回も見せたりすると,無意識のうちに相手はチョキが刷り込まれて,それを出し易くなる.

7.困ったときにはパーを出せ
先に述べたように,チョキは出にくく,グーは出やすいので,行き詰まったらパーを出せというものだ.

8.インチキして3回勝負にしてしまえ.
これはあなたの名誉を傷つけることになるのだが,もし1回勝負のジャンケンで負けたら,負けた後に「この勝負は3回勝負で,先に2回勝った方が勝ちだ」と後から言い張れというものだ.必ずしも勝てるとは限らないが,逆転の可能性は無から有に変わる…ってこれじゃズルでしょ...でも小さい頃,近所の女の子とジャンケンをすると,いつもこれをやられてた.彼女は,自分が勝ったときは1回勝負だと言い張り,初回に自分が負けると3回勝負だと言いはった.

以上です,翻訳が間違ってたらごめんなさい.

オークション理論の本

オークション理論を勉強するために参考となる本をいくつか紹介しておきます.

“Auction Theory, Second Edition”,Vijay Krishna, Academic Press, 2009.
オークション理論の最も優れたテキスト.単一財の独立価値モデル,価値依存モデル,メカニズムデザインと最適オークション,非対称均衡の分析,複数財のオークションと必要な理論が網羅されていて,しかも確率理論の必要となる部分(特に順序統計量と確率順序)がすべて付録に書かれている.数学記号の使い方も厳密で且つ簡潔で,他分野でもこれほどよくできたテキストは珍しい.真面目に勉強したいならばこれでやりましょう.なおfirst editionは2002年に書かれており,まだ売っていてKindle版もある.
あくまでも厳密な理論を学ぼうと言う人向けです.
「マーケットデザイン入門」,坂井豊貴,ミネルヴァ書房,2010.
Krishnaの本は英語だし重厚なので,まず「日本語で簡潔にオークション理論」を学びたいというなら,これが良い.単一財,複数財のオークションのエッセンスが書かれている.著者の坂井豊貴氏はメカニズムデザインの研究者として知られ,本書もマーケットデザインの入門書として前半をオークション理論に,後半をマッチング理論に割いている.
なお,あくまでも厳密な理論を学ぼうと言う人向けです.
「オークションの人間行動学 最新理論からネットオークション必勝法まで」,ケン・スティグリッツ (著), 川越敏司・佐々木俊一郎・小川一仁 (翻訳),日経BP社,2008.
“Snipers, Shills, & Sharks: eBay and Human Behavior,” Ken Steiglitz, Princeton University Press, 2007の翻訳.翻訳者の中心である川越先生は実験経済学の研究者として知られ,オークション理論にも詳しい.本書も,オークション理論だけではなく,実験経済学や行動経済学の知見や,ネットオークションも盛り込まれており,付録にはオークション理論の簡潔なサーベイがあるので,これを勉強すると良い.理論をしっかり学ぼうと言う人でなくても,何とか読めます.
「オークション理論の基礎」,横尾真,東京電機大学出版局,2006.
著者の横尾先生は計算機科学でのオークションとメカニズムデザインの研究者として有名. この本は,計算機科学で特に重要な複数財オークションや架空名義入札という概念を中心にして,オークション理論の考え方やゲーム理論の考え方を初歩から分かりやすく説いている本である.誰もが読むことができます.
オークション理論は,不完備情報ゲームという「確率」や「均衡」の概念を用いているが,横尾氏を中心に計算機科学分野で使われるVCGメカニズムというオークションは耐戦略性という性質を重要視していて,この性質を中心として理論を展開する場合は,確率計算をあまり必要としない.このような分野からオークションを知りたい者には,最良の本であると言えます.
“An Introduction to Auction Theory,” F. M. Menezes, P. K. Monteiro, Oxford University Press, 2008.
洋書を含めてもオークション理論をきちんと説明している本は少ないが,この本はそのうちの1つである.「Krishnaを1冊読みきるのは難しいので,少ない分量で...」というならこの本はどうだろうか.変わった数値例があって面白い.でも,あくまでも理論を学ぼうと言う人向けです.
「メカニズムデザイン」,坂井豊貴・藤中裕二・若山琢磨,ミネルヴァ書房,2008.
メカニズムデザインで知られる3人の研究者によって書かれた本で,4章にオークション理論が載っている.本書はメカニズムデザインの一般的な理論を展開し,その適用例としてオークションを捉えたもので,その点では類を見ない本である.メカニズムデザインにも興味があるという者には,先に挙げたマーケットデザイン入門とともに読むと良い.
“Putting Auction Theory to Work,” Paul Milgrom, Cambridge University Press, 2004.
オークション理論の第1人者Paul Milgromによる本なので,是非手にしたい.単一財・複数財,独立価値・依存価値など,様々な文脈におけるオークション理論の展開が上記の本とは異なる構成で書かれている.また「積分包絡線定理」という彼のもう1つの研究成果から,オークション理論を捉えようとした意欲作でもあり,彼が携わったオークションの実際の設計に関する理論の適用も書かれている.ただ,数学の記法がやや煩雑でしかも曖昧さがあり,行間が激しく飛んでいる部分もあるので,それを埋めて厳密に理解しようとすると,なかなか大変である.なお翻訳書「オークション 理論とデザイン」,Paul Milgrom (原著), 川又邦雄・奥野正寛(監訳), 計盛英一郎, 馬場弓子(翻訳) があるのもうれしい.

講義資料

私のオークションに関連する講義資料を集めました.

中央大学講義(2012)
中央大学大学院の講義「社会と技術の数理」で,毎年1時間の講義時間を頂いて2008年から2012年まで講義をさせて頂きました.2012年のスライドのpdfファイルです.内容は,いろいろなオークションの紹介と,利潤等価定理の紹介,ネットオークションの原理と入札の戦略などです.初心者向けです.

慶応大学今井研セミナー(2010)
共同研究者である慶応大学大学院管理工学科今井潤一先生の研究室に呼ばれ,4年制と大学院生を相手にセミナーを行った時の資料です.第1回は初めてオークションの理論に触れる概論で,上記の中央大学の講義に近い内容になっています.第2回は,理論の入り口として,厳密に数式を展開し,(1)モデル化(2)第1価格入札の均衡戦略導出(3)第2価格入札の戦略の説明(4)利潤等価定理について説明しています.

単一財のオークション

単一財のオークションはオークション理論の基本となるもので,大きく2つの形式に分けられます.1つは絵画やマグロの「競り」のように,他者の入札価格を知りながら動的に行動するもので公開オークション(open auction)と呼ばれます.公開オークションは,マグロや絵画の競りのように,値段が上昇していく競り上げ式オークション(ascending auction)が一般的です.これはオークション理論では英国式オークション(English auction)と呼ばれます.これに対し公開オークションには価格が下降していく競り下げ式オークション(descending auction)もあり,オランダの花市場が代表的な例であることからオランダ式オークション(Dutch auction)と呼ばれています.

公開オークションに対して,希望価格を紙などに書いて主催者に渡すなど,他者に価格が分からないようにして入札を行うオークションは,封印オークション(sealed bid auction)と呼ばれます.大雑把に言えば,公開オークションは「競り」に,封印オークションは「入札」に対応するものです.封印オークションは,最高額入札者が自分の価格(第1位価格)で購入する第1価格オークション(first price auction)が一般的で,古書や古文書の入札などがこれに対応します.これに対して,最高額入札者が自分の次に高い価格(第2位価格)で購入する第2価格オークション(second price auction)と呼ばれるものがあり,オークション理論では重要な役割を果たしています.このオークションは動的な「競り」である英国式オークションを,静的な入札である第1価格オークションと比較するために第1価格オークションに対応させるためVickrey (1961) が考えたもので実際にはあまり例がないと思われていましたが,Lucking-Reiley (2000) は切手のオークションが,多くはこのタイプであることを明らかにしました(後に紹介するLucking-Reileyの本も参照のこと).

ネットオークションが出現する前までは,上記の4つのタイプが主なものでしたが,オークションネットオークションでは自動入札方式(proxy bidding)と呼ばれるオークションが出現しました.これは上記の英国式オークションを計算機が自動的に実現するもので,英国式オークションと第2価格オークションの中間形式と考えることができます.

単一財オークションの形式(まとめ)

 公開オークション 英国式オークション(競り上げ式)
オランダ式オークション(競り下げ式)
 封印オークション 第1価格オークション
第2価格オークション
 ネットオークション 自動入札方式

オークションの種類

オークションは様々な形があります.狭義には,売り手が1人で買い手が多数で財を取引するものをオークションと呼びます.絵画のオークション,マグロの競り,中古車のオークションなど1つの財を取引するものを単一財(single-unit)オークションと呼び, 多数の財を取引するものを複数財(multi-unit auction, multi-object auction)オークションと呼びます.複数財のオークションには,多数のワインのロット,国債,木材など同質・同一の財を多数売る場合と,周波数や空港のハブなど異質の財を複数 売る場合とで考え方や分析方法が異なります.後者の方は,財の組合せ効果(シナジー効果などとも呼ばれる)を考えてオークションの方式を設計する必要があり,近年になって大きく研究されているテーマでもあります.

公共事業入札などは,買い手が1人で売り手が複数ですが,オークションの理論の売り手と買い手を逆にすることで同じモデルで解析できるとされています(実際には,入札の参加者が提供する財の品質の違いがあり,同じ問題にはならない).また,証券取引所などで取引される株や債券は売り手と買い手のそれぞれが複数いてダブルオークション(double auction)と呼ばれます.これは需要と供給によって価格が決定される経済学の(通常の)市場に近いものなので,オークションと考えるよりも一般の市場を解明する部分均衡モデルを当てはめて分析されることが多いです.